「役不足」の正しい使い方【真逆の意味で使っているかも!?】

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だれかに思いを伝えるときに何気なく使っている「言葉」。コミュニケーションには欠かせないものですよね。

しかし、言葉の中には意味を間違えて使っているものも数多くあります。

たとえば、「役不足」。だれもが耳にしたことがあるでしょうし、使ったことがある人も多いのではないでしょうか。

では実際、どのような時に使われているのか。今回は「役不足」の使い方を紐解いていきましょう。

「役不足」とはどういう意味?

まず、「役不足」の正しい意味はこちらです。

役不足[名・形動]

 俳優などが割り当てられた役に不満を抱くこと。

 力量に比べて、役目が不相応に軽いこと。また、そのさま。「そのポストでは役不足な(の)感がある」

出典:goo辞書

このように、「その人の力量に対して、演劇や仕事での役目が軽過ぎる」というのが本来の意味です。

しかし、「あれ?」と感じた方も多いのではないでしょうか。

というのも、「言葉から連想するイメージとは違う」「普段使っている意味とは別だ」と思った方も多いはず。

実際に、文化庁が発表した世論調査によると、なんと半数以上の人が「役不足」を本来の意味ではない言葉だと認識していたという結果が出たのです。

文化庁が発表した「※国語に関する世論調査」で、「彼には役不足の仕事だ」を、「本人の力量に対して役目が軽すぎること」と「本人の力量に対して役目が重すぎること」の、どちらの意味だと思うかを尋ねたところ、次のような結果が出た。

出典:goo辞書

平成14年度調査平成18年度調査平成24年度調査
本人の力量に対して役目が軽すぎること
(本来の意味とされる)
27.6パーセント40.3パーセント41.6パーセント
本人の力量に対して役目が重すぎること
(本来の意味ではない)
62.8パーセント50.3パーセント51.0パーセント

出典:goo辞書

※「国語に関する世論調査」とは、文化庁が1995年(平成7年)から行なっている国の正式な世論調査。漢字や慣用句・敬語・外来語などの理解度や関心度、また会話や手紙などの言語によるコミュニケーションの現状などの日本語に対する人々の意識を調査し、国語施策の参考にしている。

「役不足」を誤用している人が使いたい正しい言葉は「力不足」

このように、多くの人が誤用している「役不足」という言葉。

おそらく、使用されている漢字のイメージから「実力不足でこの役割は適していない」「自分の力量じゃ荷が重過ぎる」といった意味で使用されているのではないでしょうか。

実際に、これらの意味を持つ別の言葉と混同しているのではないかと、文化庁の調査結果でも推測されています。

では、「役不足」を誤用している人が表現すべき正しい言葉は一体何でしょうか?

それは「力不足」です。

ちから‐ぶそく【力不足】 の解説

[名・形動]与えられた役目を果たすだけの力量がないこと。

出典:goo辞書

「力不足」であれば、漢字から連想する通りの意味といってもいいでしょう。

このように、「役不足」も漢字のイメージで捉えると、たしかに似たような意味で捉えられやすいのが分かります。

ですが、言葉の定義としてはむしろ真逆の意味になってしまいます。

そのため、日常生活はもちろん、ビジネスの場で誤用すると、場合によっては失礼にあたるので注意が必要です。

「力不足」「役不足」の類語

「力不足」と混同していた人が、「役不足」の言葉のイメージを急に変えるのは難しいかもしれません。

そこで、それぞれの言葉の類語を紹介するので、言葉の意味がどれほど違うか参考にしてみてください。

「力不足」の類語

能力不足・力が足りない・力が及ばない・キャリア不足・経験不足・実力不足・青二歳・未熟・半人前

このように、「力不足」は「実力がない」「力が及ばない」といった意味があるため、「役不足」を誤用していた人が表現したかった意味にピッタリと当てはまるはずです。

では、「役不足」の類語はどうでしょうか?

「役不足」の類語

楽勝・朝飯前・敵ではない・大したこと無い・相手にならない・物足りない・不満足・不十分・不服

このように、「簡単にできることだ」「余裕すぎて不満だ」といった意味の言葉が並びます。

「役不足」を誤用していた人のイメージとは正反対の意味を指す言葉ばかりではないでしょうか。

「力不足」「役不足」の例文

では最後に、「力不足」「役不足」それぞれの正しい意味を使った例文を見てみましょう。

人によっては「役不足」が違和感のある使い方をされていると感じるかもしれませんが、それはまさに「役不足」を誤用していたという証拠。

例文を見比べて、それぞれの正しい使い方を覚えていってください。

「力不足」の例文

  • 「まだまだ力不足の私ですが、期待に応えられるように努力します」
  • 「今回の件で力不足を痛感しました。この経験を今後に活かします」
  • 「力不足のため、そのような重大な案件を引き受けることはできません」
  • 「私の力不足のせいで、足を引っ張ってしまい申し訳ございません」
  • 「力不足ながら、全力で応援させていただきます」

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ニュアンスとしては、『謙遜を込めた表現』になります。

これらが「役不足」を誤用していた人の表現したかった正しい内容といえます。

そのため、今後このような意味で表現したい場合は、「役不足」を「力不足」と言い換えてみてください。

ちなみに、「役不足」を正しい意味で使うと、次のような例文になります。

「役不足」の例文

  • 「これまでの実績から考えれば、我が社での彼の扱いは役不足だろう」
  • 「彼女ほどの人物がリーダーではなく、サブリーダーとは役不足だ」
  • 「程度の仕事、あなたにとっては役不足だと思いますが、もうしばらく辛抱してください」
  • 「大御所の彼がこんな端役でミュージカルに出るなんて、明らかに役不足だわ」

このように、基本的には『他人から褒め言葉として使われる』ケースが多いです。

そのため、もし下記の例文のように、自分から「役不足」と言えば一気に印象が変わります。

  • 「何様だと思われるかもしれないが、このポジションは私にとって役不足だ」
  • 「こんな簡単な仕事を僕がやるなんて役不足だよ」

このように、かなり自信満々、悪く言えば偉そうに捉えられる表現となります。

使い方次第で、表現したい意味とはまったく逆の伝わり方になる「役不足」。

正しい意味と表現を理解して、日常会話やビジネスで使用していきましょう。

この記事を書いた人

MIYAMOTO

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