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【ネタバレあり】映画『愛がなんだ』が革新的すぎた理由!うどんで始まりうどんで終わる?

どうも、映画監督志望の田中です。

毎日1本映画を観ている私が、個人的に感じた映画の見どころを紹介していきたいと思います!

ネタバレありです!注意!

今回紹介するのは、2019年に公開された映画『愛がなんだ』。私の圧倒的2019年No. 1映画です。この映画を映画館で観たときの衝撃は忘れません。「すごいものを観てしまった」という衝撃で、エンドロールが終わってしばらく席を立てませんでした。本当です。

この記事で『愛がなんだ』の魅力をできる限りお伝えしますので、この映画が好きな方や、気になっている方はぜひご覧ください!しかしネタバレ含みます!注意!

映画概要

直木賞作家角田光代さんの同名恋愛小説を、『街の上で』『あの頃。』など話題作を連発している今泉力哉監督が映画化した作品です。

主人公、テルコ役にはドラマや映画に引っ張りだこの注目女優、岸井ゆきのさん。テルコの想い人、マモちゃん役には、現在『逃亡医F』で主演、数々の話題作に出演している今や実力派俳優の成田凌さん。そのほか脇を固めるのは深川麻衣さん、若葉竜也さん、江口のりこさんと実力派揃い。

当初は全国72館公開と小規模でしたが、女性やカップルを中心にSNS、口コミで話題となり、低予算作品としてあまり例を見ないロングランヒットを記録しました。私も映画好きの友人に「20代の若者でこれが刺さらない人はいるのか?」と勧められたことが鑑賞のきっかけでした。

あらすじ

28歳のテルコはの生活は、マモちゃんに一目惚れした5ヶ月前から、マモちゃんを中心に動いている。いつだって最優先はマモちゃんで、そのせいで仕事をクビになってもお構いなしである。しかしマモちゃんにとってテルコは、都合の良い女でしかなかった。それでも今の関係を保っていたいテルコは、自分からは一切連絡をしないし、決して「好き」とは伝えない。

ある日、久しぶりマモちゃんから食事に誘われ会いにいったテルコ。そこにはマモちゃんの「好きな人」すみれさんがいて……。

ざっくり感想

この作品の魅力として伝えたいのは「テルコの革新的な描かれ方」「人間関係の多様性」「愛へのアンチテーゼ」です。

「テルコ」の描かれ方が革新的!

この作品の大きな魅力は、主人公テルコの「どんな関係になってもマモちゃんと繋がっていたい」というある種異様ないじらしさ、健気さです。マモちゃんに執着するテルコは、世間から見ると「可哀想」に映るかもしれませんが、本人は自分を「可哀想」だなんて思っていません。

マモちゃんからあまりにもぞんざいな扱いを受けているテルコの精神状況を心配した親友の葉子に対しても、テルコはあっけらかんと「死んだらマモちゃんに会えなくなる」と言います。終盤ではもはやマモちゃんを好きかどうかも分からなくなっているものの、どうにか繋がっていたいとあがき、「愛がなんだ」と吐き捨てます。

世の中にはさまざまな恋愛映画がありますが、ここまで良い意味でナチュラルで純粋な狂気を感じるヒロインは見たことがありません。『愛がなんだ』が革新的なのは、まさに主人公テルコの描かれ方といえるでしょう。

テルコの印象は人それぞれ

映画好きの友人達にテルコの印象を聞いたところ、面白いくらい意見が分かれました。「まるで私かと思った」「健気で可愛い」という感想もあれば、「執着の仕方が怖かった」「可哀想で見ていられなかった」などさまざま。

テルコに対しどう感じたかは、そのままその人の恋愛観を示しているともいえます。

人間関係の在り方の多様性

この映画では、人間関係の在り方の多様性が描かれています。主人公テルコは、自分に振り向いてもらえないマモちゃんを追いかけ続けます。どんなに細い糸でもマモちゃんとの繋がりが欲しく、興味のない男を紹介してもらってまでマモちゃんに会おうとします。

テルコの親友葉子とナカハラの関係も似ていて、自分に惚れているナカハラに対し、葉子は無下な態度を取っているようにみえます。

マモちゃんが片想いしているすみれも、「煮詰まった関係が好きじゃない」と、誰かと親密になるのを避けるような態度を取っています。

このように、ただ人と人が心を通わせ合い恋人になることだけが、恋愛関係として人と人が関わり合っていく正解ではないことを示しているのです。

この映画の魅力は、「人間関係の在り方に正解はなく、人それぞれだ」と思わせてくれる点だと思います。

「愛」という言葉へのアンチテーゼ

『愛がなんだ』というタイトル通り、この映画は「愛」という言葉へのアンチテーゼの側面があると感じました。

映画鑑賞前は、うまくいかない恋愛に対し悪態をつくような意味合いでこのタイトルが使われているのかと思っていたのですが、映画を観たあとは全くその予想が外れていたことに気がつきました。物語終盤、テルコがマモちゃんに対する気持ちを自問自答している場面で、「愛がなんだ」と吐き捨てます。テルコのマモちゃんへの気持ちは「愛」なのか「愛ではない」のか…そんなことを考えることすら馬鹿馬鹿しい、といったところでしょう。

テルコはマモちゃんとの恋愛で落ち込んだり悩んだりするものの、根本にある、まっすぐすぎる「マモちゃんへの想い」が変わることはありません。それは人の心を思わず熱くさせてしまうような熱狂でもあり、ある種人を恐れさせてしまうような狂気でもある。この、テルコのマモちゃんへの「愛」とか「愛じゃない」とかがどうでも良くなってしまうほど純粋な想いこそが、この映画の大きな魅力なのではないでしょうか。

見どころ

『愛がなんだ』の個人的見どころを紹介します。

ドロドロの煮込みうどん

この映画は、「うどん」で始まり「うどん」で終わるといっても過言ではありません。

序盤、風邪をひいたマモちゃんの看病にきたテルコは、ドロドロの手作り煮込みうどんを作ります。そう、まるでテルコのマモちゃんへの気持ちを表すように濃くドロドロと煮えたぎっているのです。そんなお手製うどんを見たマモちゃんは、分かりやすく引いた顔を見せます。

しかし物語終盤、テルコとの楽で曖昧な関係を切ろうとするマモちゃんがテルコに作るうどんは、美味しそうではあるものの非常に簡易的でサラッとしているのです。

このように、両者の相手に対する気持ちが、お互いの作るうどんによって表現されているのが非常に映像的で面白いと感じました。

岸井ゆきのさん驚きの怪演

この映画は、岸井ゆきのさんの怪演が大・大・大見どころといえるでしょう。

一見小柄で可愛らしい女性に見えるテルコ。しかし、その内面はマモちゃんへの熱い狂気で満ちている。それは本人すらも気づいていない狂気であり、無意識的に起こるものだからこそテルコという人物が可愛らしくも恐ろしく見えるのです。

この、ただの恋する乙女ではない難しい役所を岸井ゆきのさんが完璧に演じていたと思います。

成田凌さん、120%のハマり役

テルコを夢中にさせるマモちゃんは、猫背でヒョヒョロ、テルコ視点ではハマると危険な男として描かれています。マモちゃんを演じた成田凌さんの説得力は物凄く、120%のハマり役だと感じました。

テルコに接するときの、猫のような気まぐれな仕草、表情、喋り方は必見です。映画好きの友人からも「昔片想いしてた人に似てる」「辛かった過去を思い出した」と好評(?)を得ていました。

若葉竜也さんの唯一無二の哀愁

この映画は、テルコの親友、葉子に片想いをしているナカハラなしでは語れません。

いつも葉子に振り回されているナカハラですが、この現状に満足している様子。しかしすみれに「その関係ってなんか変」だと指摘され、葉子との関係について考え直すようになります。

ナカハラを演じるのは、演技派の注目若手俳優の若葉竜也さん。若葉さんがまた最高に哀愁のあるナカハラを演じています。

葉子を諦めることをテルコに告げたナカハラの帰り際のセリフは、個人的にこの映画一の名台詞だと思います!

自分は誰タイプか考えながら観ると楽しい!

この映画には、「どれだけ無下にされてもまっすぐ相手を思い続けるテルコ」「ついつい楽な関係に甘えてしまう気まぐれなマモちゃん」「長く煮詰まった片思いから脱却することを選んだナカハラ」「煮詰まった関係が苦手で誰とでもライトに接するすみれ」と、恋愛においてさまざまな考え方・姿勢を持つキャラクターが存在します。

映画鑑賞後、自分がどのタイプに当てはまるか友人と話し合ってみると、異常なほど盛り上がります。ぜひやってみてください!

『愛がなんだ』が好きな人におすすめの映画

この章では、『愛がなんだ』が好きな人におすすめの映画をご紹介します。

「成田凌」「20代の恋愛」「夜」「エモーショナル」「振り回される恋」などをキーワードに、以下3つを選ばせていただきました。

窮鼠はチーズの夢を見る

あらすじ

優柔不断な性格で不倫を重ねてきた大伴恭一(大倉忠義)の前に、大学卒業以来に後輩・今ヶ瀬渉(成田凌)が現れる。今ヶ瀬は恭一の妻から浮気調査員として派遣されており、恭一の不倫を追っていた野田。今ヶ瀬は、恭一の不倫の事実を隠す条件に、身体の関係を要求する。恭一は拒絶するが、優柔不断の性格も相まり、長年一途に恭一を思い続けてきた今ヶ瀬のペースに乗せられていく。恭一は今ヶ瀬との2人で過ごす時間が心地よくなっていくが、元恋人である夏生と偶然再会し……。

おすすめポイント

『愛がなんだ』ではテルコと振り回す役として出演していた成田凌さんが、この映画では優柔不断な男に振り回されるという逆の役所というのが面白いポイントです。

しかし、相手を自分のペースに持っていき魅了する気まぐれな猫のような愛嬌はこの映画でも健在です。

また、『愛がなんだ』同様「好きになってはいけない人なんていない」という人間関係の多様性が描かれており、内容面でもおすすめしたい作品です。

生きてるだけで、愛

あらすじ

「生きてるだけで、ほんと疲れる。」鬱が招く過眠症で引きこもり状態になっている寧子と、寧子との同棲生活を続ける出版社勤務の津奈木。静かに生活していた二人だが、津奈木の元カノが現れたことがきっかけで、寧子は外の世界と関わらざるを得なくなる。そして二人の関係にも変化が訪れる……。

おすすめポイント

この作品は躁鬱病の主人公寧子と、寧子を支える恋人津奈木、二人の物語を中心に周辺人物との関わり方なども描かれています。

『愛がなんだ』でも見られる20代の若者のエモーショナルな夜が美しく、儚く表現されています。

また、この作品の大きな魅力は、夜の描写です。「赤」「緑」の光を多用した夜の風景は絶妙なコントラストで、寂しくも美しい静かな夜を演出しています。深い夜の世界に浸りたい人にもおすすめの作品です。

また、タイトルにもあるように、こちらの作品も「愛」という言葉を意識せざるを得ません。この作品では、鬱病の寧子と、寧子を支える津奈木という二人の間にあるものはいったい何なのか考えさせる内容になっています。

(500)日のサマー

あらすじ

建築家を夢見ながらも、グリーティング・カード会社で働くトム。その会社に社長秘書として入社したサマーに、トムは一目ぼれをする。運命の恋を信じるトムは、サマーに猛アプローチ。遂に一夜を共にし有頂天になるトムでしたが、サマーにとってトムは運命の人なんかではなく、ただの「友だち」でしかなかった…。

おすすめポイント

『(500)日のサマー」は言わずもがなの片想い映画の金字塔ですが、ぜひここで『愛がなんだ』を見た人に改めておすすめさせていただきい。この作品は、『愛がなんだ』同様に、主人公トムがサマーに恋をし、一夜を共にするが恋人関係になれることもなく、片想いをこじらせていきます。

劇中でサマーは恋多き女のように映りますが、まさに「好きになっていけない人はいない」という人間関係の多様性を体現したようなキャラクターでもあります。「愛がなんだ」と言わんばかりに直感的にポジティブに人間関係を楽しむサマーの眩しさはぜひ感じてほしいです。この映画を見たことがある人でも、『愛がなんだ』観賞後に観ることで、また感じ方が変わるかもしれません。

まとめ

人と人が出会ったら、それだけ関係性の形が生まれます。一つとして、同じ形はありません。二人の人間の出会いを「都合の良い関係」などと一蹴できる人なんて本当はこの世にはいない、ということを思い知らされる作品です。

ぜひご覧ください!