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【ネタバレあり】映画『青い春』の見どころや感想をご紹介!若者の衝動と狂気はいつも美しい

こんにちは、映画監督志望の田中です。

毎日映画を観ている私が、おすすめ映画の見どころや感想をご紹介します。

本日紹介するのは、2002年公開の映画『青い春』。豪華キャストで送る退廃的な学生生活と、ミッシェル・ガン・エレファントの楽曲がマッチしたどす黒い青春映画。後世に語り継ぎたい作品です。

※ネタバレ含みます

概要

阪本順治監督『ビリケン』で脚本を担当、『ポルノスター』で監督デビューした豊田利晃の代表作。

漫画家松本大洋の短編集「青い春」の4編をもとに、男子高校生4人の日々を描きます。松田龍平さん、高岡蒼佑さん、大柴裕介さんら当時の新鋭俳優が揃います。劇中の挿入歌はミッシェル・ガン・エレファント。

あらすじ

朝日高等学校の卒業式の日、先輩達が3年間の恨みを晴らすべく教師を追いかけ回している。そんな風景を眺める、新学期から3年生になる九條、青木ら6人。彼らは青空をバックに、皆で記念写真を撮る。屋上にはもっと「空に近い場所」、最屋上があり、そこで彼らは柵の外に立ち手をたたいた回数を競う危険な「ベランダゲーム」に興じる。たたいた回数が多ければ多いほど肝が据わっている証となり、勝者は学校を仕切るのが習わしである。新記録を出した九條であったが、彼はこのゲームも学校を仕切ることもただただ無意味だった。

新学期になり、授業中も不良少年たちは堂々と教室を出入りする。野球部は地区予選敗退。甲子園への夢も儚く消え、進学も難しい。就職するにしても、したいことが見つからない。少年たちは空虚な現実のなか、自分の行き先を探すことを余儀なくされる…。

感想

まずは作品のざっくりとした感想を述べていきます。

退廃的な不良少年たちの青春

この作品では、不良少年たちの青春が、どろりと退廃的に描かれています。

青春とはきらきら輝くものだけでなく、将来への漠然とした不安や何もない自分、安息の地のような現状を手放す恐怖などがつきものだと思います。そういった若者の薄暗い部分を含めて青春だと、この物語は気づかせてくれます。

『青い春』に登場する人物たちの青春は、どこか狂気的だったり、虚しかったり、ダークな部分が目立ちます。しかし、そういった負の部分含めて、眩しく羨ましい。

それは、将来を案じたり、自分が何者なのか模索したりする不安定な状況が、若者の特権といえるからなのではないでしょうか。青春は必ずしも輝かしいものではなかった。それでも若さゆえの葛藤は美しい。というわけで、この作品のどんよりした暗さは、そのままで完璧であり、美しいのです。

若者の衝動性と狂気

この作品の魅力を際立たせているのは、若者特有の衝動性と狂気ではないでしょうか。

作中では、甲子園の夢に敗れ不良の道へ進んだり、同級生を殺害したりと、負の衝動で突き動かされる人物たちが描かれます。しかしそれがあまりに淡々としているもので、なおさら狂気を感じます。

作中の人物たちは、皆それぞれに哀しく、悲惨です。そんななかで、主人公九條の、何事にもどこか上の空な態度は現状への諦めのように見えて、余計に痛々しく映ります。

不思議な作品です。決してそういう描写があるわけではないのに、まるで「世界の終わり」が迫っているように退廃的なのです。常に何かを失う危険と隣り合わせ。そんな世紀末的な雰囲気は、若さゆえの衝動があまりに刹那的だからでしょうか。

学校という閉鎖的な社会の鬱屈

作品の舞台は、彼らの通う朝日高等学校。作中では、徹底して学校シーンのみが描かれています。まるで生徒たちが学校という小さな世界に閉じ込められているように閉鎖的です。

そのせいで、視聴者も常に不安な気分に苛まれます。でもこの不安、身に覚えがあります。

そうです、自分自身の学生時代の記憶に似ているのです。事実はどうだったか分かりませんが、私も学生時代、こんな風に閉塞感を抱え、鬱屈とした教室に閉じ込められていたような気がします。今となってはおかしな話ですが、その時は教室という狭い世界がすべてであり、一生ここから出ることはできないと思い込んでいました。

『青い春』にしても、登場人物たちが学校から離れた姿が想像できません。

この、誰もが経験したことがあるような「学校」という世界の絶妙な閉塞感が、この作品の大きな魅力だと感じます。不思議なことに作品を観たあと独特の虚無感に襲われるものの、2度と観たくないとは思わないのです。むしろ逆で、何度も観たくなる。

それは、確認する作業に似ているように感じます。自分もかつてはこの場所にいたということを、確認したいのかもしれません。

見どころ

次に、映画『青い春』の魅力をさらに深掘りしていきましょう。

作品の世界観にマッチしたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT

この作品を名作たらしめている大きな要素は、なんといってもミッシェルガンエレファントの楽曲でしょう。

作中では、全編を通してミッシェルガンエレファントの名曲が使用されています。衝動的で不安定な少年たちと、ミッシェルガンエレファントの荒々しい音楽が非常にマッチしています。

ここまで音楽との親和性が高い映画といのは、本当に観たことがないかもしれません。もはや『青い春』がミッシェルガンエレファントの音楽の魅力をより際立たせているか、ミッシェルガンエレファントが『青い春』を魅力的にしているのか分からなくなります。

きっとその両方なのでしょう。というわけで、作中で流れるミッシェルガンエレファント、必聴です。

心に残る終盤シーン

個人的には、終盤の青木(新井浩史)の屋上シーンは見どころも見どころです。

屋上で直立する青木、流れるミッシェルガンエレファント、急速に一晩が過ぎていく疾走感のある演出、すべてがばちこんとハマっています。「映画史に残る名シーン」に挙げても誰も文句を言わないのではないでしょうか。

序盤、中盤と淡々としたシーンが続くなかで、この疾走感のある終盤シーンの緩急はお見事としか言いようがないです。必見です。

今では実現不可能な豪華キャスト陣

この作品の大きな魅力は、今では実現不可能だと思われる豪華なキャスト陣です。

松田龍平、高岡蒼甫、新井浩史、(永山)瑛太…。今では名の知れた名俳優たち立ちですが、当時はほぼ無名だった方も多いようです。皆さんそれぞれ素敵な演技を見せており、このキャスト無くしてこの映画は成り立たなかったとも思います。

とにかく、かっこいいんですよね…。個人的には心に鬱屈した闇を抱えた荒井浩史さんの演技が最高でした。表情一つひとつに目が離せません。松田龍平さんも、10代でこのある種老成した雰囲気を醸し出せるとは圧巻です。しかし現在の大人の魅力とはまた違った、少年特有の儚さも併せ持っており、向かうところ敵なしだったのではないでしょうか。

とにもかくにも、ぜひ若かりし名優たちの演技にもご注目あれ、といったところです。

『青い春』が楽しめる人の特徴

映画『青い春』を楽しめる人の主な特徴は、下記になります。

  • ミッシェルガンエレファントが好き
  • 松本大洋が好き
  • 少し歪んだ青春映画が観たい
  • 退廃的な映画が好き
  • 暴力描写OK、または好き
  • ちょっと憂鬱な気分に浸りたい

『青い春』が好きな人におすすめの映画

ここでは、映画『青い春』が好きな人におすすめの映画をご紹介します。ぜひ、併せてチェックしてみてください。

ピンポン

松本大洋の同名人気漫画を映画化。監督は、ジェームズ・キャメロン監督のデジタルドメインで 『タイタニック』のVFXに参加した曽利文彦さん。脚本は『GO』『木更津キャッツアイ』の宮藤官九郎さん。

キャストは、主人公ペコ役に窪塚洋介、スマイル役にARATA(井浦新)。脇を固めるのは夏木マリ、竹中直人、中村獅童など実力は揃いです。

小学校時代、ガキ大将だったペコは、得意の卓球をいじめられっ子のスマイルに教える。しかし時は過ぎ高校生。高校入学初の全国大会でスマイルは勝ち進むが、ペコは小学校時代からの幼なじみアクマに負けて敗れてしまう。大ショックを受けるペコは、次第に卓球から離れていく。一方才能を認められ、どんどん卓球のスキルが上がっていくスマイルは、それでも浮かない表情が続く。スマイルにとって大切なのは自分にとって幼い頃からのヒーロー、ペコの存在で……。彼らそれぞれ想いを抱えた1年後、ついに次の大会がやってくる。

おすすめポイント

『ピンポン』は、『青い春』同様松本大洋さん原作ということで、ぜひおすすめしたい作品です。

内容も卓球についてだけでなく、少年特有の自分の存在意義や将来についての普遍的な悩みが描かれています。印象的なセリフの応酬や、スタイリッシュで斬新に描かれる卓球シーン。差し込まれるスーパーカーのポップで浮遊感のある音楽など、見どころ、聴きどころがてんこ盛りです。

『青い春』が好きな方はきっと楽しめる作品だと思うので、ぜひチェックしてみてください!

GO

高校3年、杉原は韓国国籍だが、普段そのことはまったく気にしていない。しかし同じ高校の少女、桜井と親密になるにつれ、いつか自分の国籍を告白しなくてはならないと思うようになる。そんなある日、同じ国籍の親友に悲劇が起こり…。

原作は金城一紀さんの同名直木賞受賞作。監督は『世界の中心で、愛をさけぶ』『劇場』の行定勲さん。脚本はTVドラマ『池袋ウエストゲートパーク』の宮藤官九郎さん。

おすすめポイント

『GO』も、若者特有の衝動性や狂気が退廃的に描かれています。桜井という少女に出会ったことにより、「自分とは何か」突き詰めていく主人公杉原の葛藤は、まさに少年特有のもので、どんよりとした青春そのもの。

結構意外と爽快感のあるラストになっているので、『青い春』で気持ちがどんよりしてしまった方にもおすすめの作品です。

ポンチョに夜明けの風はらませて

デビュー作『世界グッドモーニング!!』で世界各地の映画祭で注目を集めた廣原暁監督が、早見和真さんの同名青春小説を若手実力派俳優で実写映画化。

お調子者の主人公又八を太賀(仲野太賀)さん、クールなジンを中村蒼さん、明るく心優しいジャンボ役を矢本悠馬さん、3人の帰りを待つ少し不憫な中田を染谷将太さんがそれぞれ演じます。

将来に希望を見出せず、なんとなく高校生活を過ごしていた又八、ジン、ジャンボ。卒業を間近に控え、ジンは一流大学へ進学を目指し、ジャンボは実家のとんかつ屋を継ぐことに決めていたが、又八だけ何も進路を決められていなかった。

ありふれたこの日常から少しだけ抜け出したい…。そんな思いで、又八、ジン、ジャンボはジャンボの父親の愛車セルシオを無断で借りて海へと向かう。3人は道中でグラビアアイドルの愛、風俗嬢のマリアと出会いながら、非日常のハチャメチャな体験をする。

一方、3人から置いてけぼりをくらい、又八と約束していた卒業ライブに向けギターの練習に明け暮れる中田。果たして卒業式までに又八らは帰ってくるのか…。

おすすめポイント

この作品も、『青い春』のように、卒業を控えた学生が、あてもない未来を思い憂鬱になるという話です。

屈託ない若者たちの、でもどこか虚無感のある雰囲気にご注目。比較的最近の作品であり、俳優陣も世代交代の色が見えます。本作では、実力派俳優の仲野太賀さんが主演の又八を演じます。そして、鬱屈とした反抗心を隠し持つ作品のキーパーソン、中田役に染谷将太さん。

個人的に、ベストオブラストシーンだと思っています。最後の疾走感は邦画随一と言いたい。ぜひ、何もかも吹っ切れたラストシーンを堪能していただきたいです。

まとめ

以上、映画『青い春』の見どころや感想をご紹介しました。

若者特有の刹那的な衝動性をどろりと美しく描いた本作。ミッシェルガンエレファントの名曲とともに没入できるくすんだ青春映画。ぜひご覧ください。

ここまで読んでいただきありがとうございました!