こんにちは、映画監督志望の田中です。
毎日映画を観ている私が、おすすめの映画の見どころや感想をご紹介します。
今回ご紹介するのは、2016年公開の映画『グッバイ、サマー』です。
王道ティーンエイジャーの青春映画といった印象ですが、大人が観ても勇気をもらえる作品。ぜひチェックしてみてください!
※ネタバレ含みます
目次
概要
『エターナル・サンシャイン』で知られるミシェル・ゴンドリー監督の自伝的作品。クラスメートの14歳の少年2人が夏休みに自作の車で旅をする青春ロードムービー。
中性的な容姿でクラスメートから馬鹿にされ、悩みを抱える画家志望のダニエル。そんなある日、ダニエルのクラスに、目立ちたがり屋で一風変わった転校生のテオがやってくる。ダニエルとテオは、周囲から浮いた存在同士、意気投合する。息苦しく鬱屈とした毎日から脱出するべく、二人はある計画を思いつく…。
『アメリ』で一躍有名になった女優のオドレイ・トトゥが出演していることでも話題に。
あらすじ
14歳−−。子供でも、大人でもない狭間、微妙な年齢である。
画家を目指すダニエルは、多くの悩みを抱えていた。 中性的な容姿と華奢な体型で、クラスメートからミクロ(チビ)と呼ばれ馬鹿にされていた。密かに想いを寄せているローラにも、まったく相手にされない。おまけに母親は過干渉気味で、兄は暴力的なパンクロックに夢中。
「誰も本当の自分を分かってくれる人はいない……。」
そんなある日、ダニエルのクラス一風変わった転校生のテオがやってくる。少々目立ちたがり屋で、自ら改造した自転車を乗り回している。ておは家の稼業のせいで、いつも身体からガソリンの匂いを漂わせている。周囲から浮いているダニエルとテオはすぐに意気投合し、やがて親友となる。
何事も枠にはめて管理しようとする大人たちが息苦しくて、そんなうんざりするような毎日から脱出するため、二人はとっておきの“ある計画”を思いつく。それは、スクラップを集め〝夢の車”を作り、夏休みの旅に出ることだった…。
感想
まずは作品の感想をご紹介します。
子供のころの気持ちを忘れないで
この作品は、単にティーンエイジャー向けというわけでなく、大人たちへ「子供の頃の気持ちを忘れないで」というメッセージが込められているように感じました。
大人になるにつれ、どんどん固定概念に囚われていき、枠にはまった生き方に安定していくようになります。作中、主人公のダニエルとテは常に、「個性的」であることを大切にしています。
子供の頃の無垢で純粋な自分の心、「自分は何をしたいか」「どうなりたいのか」を重視して行動します。まっすぐだった子供のころの気持ちを思い出させてくれる、そんな素敵な映画です。
フランス版「スタンド・バイ・ミー」とも言われています。
「個性的」ってどういうこと?
劇中ではダニエルがテオに「個性的であること」について問う場面が多いです。
ダニエルは周りと一緒であることを嫌い、オリジナルであろうとします。それでも、自分に自信が持てない彼は、大きな行動に出せずにいる。常に周囲の目を気にしている自分に引け目を感じている。
一方テオは、どこか成熟した一面があり、いつも堂々としている。周りから変わり者だと言われても、振る舞いを変えようとはしない。そんなテオに、きっと憧れのような感情を抱いていたダニエル。
特に印象的なセリフがあります。髪を伸ばしているダニエルはその理由を、「人と一緒は嫌だからと言います。それに対してテオは「個性に髪型は関係ない。自分の選択や行動で決まるんだ」と言います。
このセリフには非常にハッとさせられるものがありました。自分を形作るものは、「目に見えないもの」であると諭すテオ。
まさに「目に見える成果や容姿で物事を判断する」大人たちへのアンチテーゼのような内容です。同じくフランス生まれの小説「星の王子さま」を彷彿とさせるセリフですね。
見どころ
次に、作品の見どころを深掘りしていきましょう。
14才という絶妙な年齢、思春期模様
主人公の二人は、14歳。多感であり、自分とは何かを考え出す、非常に微妙な年齢です。
思春期の少年の複雑な感情やうらはらな行動に、どうも胸が締め付けられてしまいます。ダニエルは中性的で可愛らしい容姿をしていますが、内面は好きな女の子やクラスメートを見返したい野心に溢れている。しかし、身体はなかなか成長してくれない…。非常にもどかしいです。
一方転校生のテオは、少年にしてはどこか成熟している。大人っぽい物言いや冷静さ、馬鹿にされても反論せず、堂々としています。それは、あまり裕福ではなく、病気がちの母親の代わりに家事をしていたり、父の手伝いをしていたりする境遇をそうさせているのかもしれません。テオの子供にしてはどこか悟った部分に、純粋に子供でいられない寂しさを感じます。
そんなテオも、ダニエルと旅をしている最中ははしゃいで楽しんでいたのが非常にほっこりしました。
またいつか、二人が再会できると良いですね。
随所に挟まれるファンタジー要素
この作品では、随所に夢か現かといった、ファンタジー要素が挟まれるのが印象的でした。不可解な歯医者の男や風俗店と理髪店を営むアジア人、後ろ向きに進む飛行機や列車…。
これは少年が見た夏の夢なのではないかと感じさせる演出が散りばめられています。
例えば飛行機のなか、ダニエルだけが起きていて、テオ含めほかの乗客は全員眠っている。コックピットの機長までもが!
こんな光景、子供の頃に夢で見ませんでしたか?
私も見たことがあります。家族で会食に行ったものの、気づくと料亭に自分一人に。家族や店員、他の客たちも誰もいなくなっている。
幼いころ特有の不安や孤独感をうまく映像で表しており、既視感を与えるものになっていたと感じます。
衝撃のサムライヘア
驚いたのは、ダニエルのサムライヘアです。
女の子と間違えられることに嫌気がさしたダニエルは、旅の道中で散髪することを決めます。しかし、行く先々で散髪屋が閉まっており、やっと開いていた店を見つけたかと思えば、風俗店兼美容院という怪しげな雰囲気。
強引に椅子に座らされたかと思えば、頭の真ん中だけ刈り上げられたサムライヘアにされてしまうのです。
それまで美少年として儚げな雰囲気を漂わせていたダニエルだけに、この変貌は衝撃的で思わず笑ってしまいました。
ダニエルの驚きのイメージチェンジ、必見です。そして少しシュールです。
『グッバイ、サマー』が楽しめる人の特徴
映画『グッバイ、サマー』が楽しめる人の主な特徴は、下記のとおりです。
- ロードムービーが好き
- 夏を感じたい
- スタンド・バイ・ミーが好き
- 大人でいることに疲れてしまった
- 童心を取り戻したい
- 車で旅に出かけたい
- フランス映画の雰囲気が好き
『グッバイ、サマー』が好きな人におすすめの映画
ここでは、映画『グッバイ・サマー』が好きな人におすすめの映画をご紹介します。ぜひ併せてチェックしてみてください!
スタンド・バイ・ミー
ジュブナイル映画の金字塔。スティーブン・キングの小説「死体」を、ロブ・ライナー監督が映画化。どこかノスタルジックな青春ドラマに仕上がっています。
オレゴン州の小さな田舎町、キャッスルロック。主人公は、それぞれ家庭内に問題を抱える4人の少年たち。彼らは、町から30キロほど離れた場所に列車の轢死体が放置されている噂を聞きつけ、死体探しの旅に出る。
出演は『マイ・プライベート・アイダホ』のリバー・フェニックスほか、ウィル・ウィートン、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネルら。
おすすめポイント
フランス版スタンド・バイ・ミーと言われている『グッバイ、サマー』。というわけで、まずおすすめしたいのが『スタンド・バイ・ミー』です。
言わずもがなの青春映画の金字塔。あまりにも有名な線路を歩く四人のシーン。「死体探しの旅」という、スリリングで少しワクワクする名目。すべての要素が童心に帰れること間違いなしの本作。
大人でいることに疲れたとき、ふと旧友のことを思い出したとき、無性に見たくなる不朽の名作です。
6才のボクが、大人になるまで。
『ビフォア・ミッドナイト』を手がけkたリチャード・リンクレイター監督が、ある一人の少年の6才から18才まで成長と家族の軌跡を、12年をかけて撮影したホームドラマ。
主人公の少年エラー・コルトレーン、母親役を演じたパトリシア・アークエット、父親役を演じたイーサン・ホーク、姉役を演じたローレライ・リンクレーターの4人の役者が、12年間にわたり同じ役を演じ続け完成された話題作です。
第87回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞ほか6部門で候補に挙が流。母親役のアークエットが助演女優賞を受賞。
テキサス州に住む6歳の少年メイソン。彼はキャリアアップのため大学に入学した母に伴われて、ヒューストンに転居する。そしてその地で多感な思春期時代を過ごす。その後、アラスカから戻った父との再会、母の再婚、義父の暴力、初恋を経験し、メイソンは大人になっていく。やがてアート写真家という夢を見つけ、母親のもとを巣立っていく…。12年という歳月のなかで、母は大学教員となり、ミュージシャンを夢見ていた父は就職するなど、家族にも変化が生まれていた。
おすすめポイント
この作品は、一人の少年の人生を6才から18才まで追った作品です。まさに多感な時期にフューチャーし、家庭内の問題や恋、将来など、ティーンエイジャーの悩みや葛藤が詰まった作品。
メインキャラクターを演じる役者が12年間変わっていないことで、よりリアルにその登場人物の変化や成長を感じることができます。
この作品のすごいところは、なかなかの長尺で淡々と少年の12年間を描いているにもかかわらず、飽きずに見続けられることです。そして最後には、主人公メイソンに愛着が湧いており、彼の幸せを願わずにいられない。だけどメイソンが大人になっていくことがどこか寂しく、ずっと少年のままでいてほしいとも思ってしまう。非常に不思議な魅力のある作品です。そして父親役のイーサン・ホークが素敵!
mid90s
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などで有名な俳優ジョナ・ヒルが初監督・脚本を手がけた自伝的映画。自身が過ごした少年時代の1990年代、ロサンゼルスを舞台に、13歳の少年スティーヴィーの成長や葛藤を描いた青春ドラマ。
シングルマザーの家庭で育った13歳の少年スティーヴィー。彼は力の強い兄に負けてばかり。早く強くなって見返したいと日々願っていた。そんなある日、スティーヴィーはひょんなことから街のスケートボードショップに出入りする不良少年たちと知り合う。スティーヴィーは、自由で格好良い少年たちに憧れ、近づこうとするが……。
『ルイスと不思議の時計』のサニー・スリッチ主演、母役に『ファンタスティック・ビースト』シリーズのキャサリン・ウォーターストン。兄役を『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のルーカス・ヘッジズが演じる。
おすすめポイント
こちらはスケボー少年たちのちょっとやんちゃな青春映画といったところでしょうか。しかし、13歳の思春期スティーヴィーの成長や葛藤が丁寧に描かれています。
スティーヴィーの周りの不良少年たちが非常に印象的で、皆どこか乾いているような印象。酒を飲んでも、女遊びをしても、どこか満たされない。将来に希望も持てない。かといって今を絶望して生きていくなんて救いがなさすぎる。そんな少年たちの憂鬱を、スティーヴィーはまだどこか理解できないでいる。だけど少年たちの乾いた感じが大人っぽくて、憧れてしまう。しかし少年たちが招いた事故が原因で、そんなスティーヴィーと少年たちの関係も変わっていく…。
レトロでおしゃれな映像も素敵なので、ぜひ観てみてください!
まとめ
以上、映画『グッバイ、サマー』の見どころや感想をご紹介しました。
ジュブナイル映画の素晴らしいところは、一人の人間の無垢で輝かしい少年(少女)時代を切り取って、永遠に閉じ込めておける点でしょう。人は嫌でも大人になります。それでも、映画の登場人物たちは子供のままでいつまでもそこにいてくれる。
「自分ってなんてつまらない大人になってしまったんだろう」そんな風に絶望した時は、ぜひダニエルやテオに会いに行って欲しい。
二人は、枠にはめたがる大人を毛嫌いし、「誰かと一緒なんてくそくらえ」の精神でその少年時代の一夏を謳歌します。彼と一緒に夏を過ごせば、自分も少しはましな大人になれるような気がしてきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました!