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映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』からみる自分探しの極意。見失ったときこそ旅へ出よ【ネタバレあり】

こんにちは、映画監督志望の田中です!

毎日映画を観ている私が、おすすめしたい映画の見どころや感想をご紹介します。

本日取り上げる映画は、香港の名匠ウォン・カーウァイ初の英語劇『マイ・ブルーベリー・ナイツ』です。

ウォン・カーウァイ監督の持ち味であるビビットな色彩表現やクールな語り口は健在で、さらに自分探しの極意を知ることができる非常に学びの多い作品となっております。

※ネタバレ含みます

概要

『2046』『恋する惑星』のウォン・カーウァイ監督初となる英語劇のラブストーリー長編作品。失恋したエリザベスは、カフェのオーナー・ジェレミーが焼くブルーベリーパイにより少しずつ傷が癒されていく。それでも元恋人への気持ちを捨てきれない彼女は、ひとり旅に出ることを決意する。エリザベスは行く先々でさまざまな問題を抱えた人びとに出会い、自分の中にもある心境の変化がもたらされる。

グラミー賞受賞歌手のノラ・ジョーンズが主演デビューを飾る。ジュード・ロウ、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマンら豪華映画スターが勢ぞろい。

あらすじ

ニューヨーク。主人公は失恋したばかりの女性、エリザベス。彼女は彼への未練が拭いきれず、彼の家の向かいにあるカフェへ出入りするようになる。毎晩エリザベスのためにブルーベリー・パイを取っておいてくれるカフェのオーナー、ジェレミー。彼と交わす他愛ない会話に心が慰められるエリザベス。しかし二人の距離が縮まったかにみえたある日、エリザベスは失恋相手が新しい恋人といるところを見てしまう。そして彼女は突然、ニューヨークから遠い旅へ出る…。

失恋から57日、1,120マイル、メンフィス。別れた美しい妻への愛を断ち切れず、アルコール中毒になった男と、その元妻に出会うエリザベス。失恋から251日、5,603マイル、ラスベガス。人を信じないことを信念とするギャンブラーに出会い、旅をともにするエリザベス。

出会った人々の人生、そして自分の人生を照らし合わせ、エリザベスは思う。「人を愛し、信じることっていったい何なんだろう…」

それを真っ先に伝えたい相手が、ジェレミーだった。

感想

まずは作品を観た感想をお伝えします。

愛ってなに?

この作品では、「愛とは何か」というテーマが提示されています。

主人公のエリザベスは恋人に裏切られ、愛を信じられなくなり旅へ出ます。そして旅の道中で出会った人物たちも、皆それぞれ「愛」についての問題や苦しみを抱えています。

エリザベスがメンフィスで働いていたバーには、妻への愛を断ち切れずにいる男がいます。彼と妻はもう長い間まともな会話すらしていないようで、妻にはほかに男がいました。しかし彼はまだ妻を愛していました。不毛に見えた関係性ですが、男が死に、そこでようやく妻は夫への気持ちを吐露します。妻の夫への愛は完全に消えてわけではなかったのです。ただ夫の気持ちの重さに耐えられなかっただけで。

ラスベガスで出会ったギャンブラーの女は、父の愛を信じきれずにいました。「人を信じるな」それが父の教えでした。誰も信じることができなくなった女は、父の死に目に会うことも叶いませんでした。

そんな人物達の人間模様を傍観していたエリザベスは、ニューヨークに戻り、ジェレミーに再会することを決意します。

生きていれば愛を信じられなくなる瞬間もあるでしょう。それでも人は一人では生きていけず、誰かを信じたいたいと願うその心は否定すべきものではなく、いつだってそんな自分の心を大切にしなければならない。そんな学びを得られる作品だと思いました。

自分探しの旅のお手本

この映画は、失恋し失意のどん底にいる主人公が自分探しの旅に出るというストーリー展開です。

この作品の素晴らしい点は、道中、そこまで劇的でドラマチックなことが起きないというところ。エリザベスが新天地で失恋相手以上に魅力的な男性と出会ったり、自分の人生を変えてしまうようなハプニングが起きたりすることはありません。むしろエリザベスは常に傍観者であり、出会った人物たちに起こる出来事も必ずしも幸せなものではない。もちろん殺人事件やギャンブラーとの火遊びは普通の出来事ではないのですが、それでもエリザベスはそこに主役として君臨しません。

そういった展開から見えてくるものは、自分探しの極意とは、出会う人間の中にある自分を見つめること。

この旅では、愛についての問題を抱えた人物たちに出会います。エリザベスは出会った人間の中に自分を見つけ、これからの生き方や自分に取って本当に大切なものを考えるきっかけにしていくのです。

自分を見失ったとき、ここではないどこかへ旅立つことにより自分を俯瞰することができるという、自分探しのお手本ともいうべき作品でしょう。

エリザベスとブルーベリーパイ

作中で象徴的に登場するのは、ジェレミーがエリザベスに出す売れ残ったブルーベリーパイです。エリザベスはそんなブルーベリーパイに対し「こんなに美味しいのに」と可哀想に思います。

売れ残ってしまうブルーベリーパイと、恋人に捨てられた自分を重ねているようにも見える描写です。

ブルーベリーパイにバニラアイスをかけると、バニラとブルーベリーソースが溶け合ってさらに美味しくなります。エリザベスが旅で探していたものは、まさにバニラアイスのような、自分をさらに魅力的にさせる「何か」だったのかもしれません。

そしてそれは、実は旅により得られたものではなく、案外身近にいる人の優しさだったりするのかもしれません。

エリザベスを救ったブルーベリーパイに乗ったアイスクリームだって、 そこらのスーパーで買えるような安値のものだったかもしれないのです。

このように、良い意味で小規模に着地していくストーリー展開は「天使の涙」にも見られ、ウォン・カーウァイ監督独自の感性が見られます。

見どころ

次に、作品の見どころを掘り下げていきましょう。

象徴的なブルーベリーパイに溶けるアイス

先述したとおり、ブルーベリーパイに溶けるアイスクリームの描写は非常に象徴的なシーンです。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』と聞くとこのシーンが思い浮かぶくらいです。

ブルーベリーの濃い紫とバニラの白のように、この作品はビビットな色合い・映像表現が魅力です。舞台を香港からニューヨークに移しても、ウォン・カーウァイ監督の唯一無二の色彩表現は健在。

また、バーでの蜃気楼のような情景や、どっぷり煮詰まったラスベガスのカジノなど、どこか閉鎖的な薄暗い夜の描写も没入度を高めてくれます。

映画を映像的に楽しみたいという方にもおすすめな作品です。

個性的な旅のキャラクターたち

旅の道中でエリザベスの前に現れた人物達は、皆個性的でどこか憎めないキャラクターばかりです。レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマンなど豪華キャストが役を演じたことで、さらに一目を引く華のあるキャラクター仕上がっていることは確かですが、彼らの存在は、エリザベスにとって自身を変えるきっかけとなります。

物語のなかで、彼らはエリザベスに愛とは何か、人を信じるとはどういうことか伝えます。彼らは皆、何かを失ったものであり、それは永久に戻ってこないことを展開が示しています。

そんな人物達の人間模様を傍観していたエリザベスは、大切なものがもう2度と戻ってこないことだってあるという事実を知ります。そして人は、失わないとその大切さに気づけないことも。

彼らとの出会いで、エリザベスはニューヨークへ戻り、ジェレミーと再会することを決めます。失恋し、どん底だった自分を励まし続けてくれたのは彼でした。エリザベスは旅を通し、身近にいる人の大切さを改めて知るのでした。

ポスターにもなったキスシーンは必見

必見は、ラスト、再会したエリザベスとジェレミーのカウンター越しのキスシーンです。映画史に残る名シーンとも名高い、あまりにも有名な再会のキスです。

1年ぶりの再会を果たした二人。原点のブルーベリーパイを食べたあと、旅の疲れで眠ってしまったエリザベスに、ジェレミーがカウンター越しにキスをします。このシーンは映画のポスターにもなっているので、ぜひチェックしてみて欲しいです。

ウォン・カーウァイ監督作品でいうと、「2046」でも、トニーレオンとコン・リーの熱烈キスシーンが印象的ですが、こちらは打って変わって「別れのキス」。

こう見ると、映画史に残るキスシーンにはさまざまなシュチュエーションがあるんですね。兎にも角にも、物語に終止符を打つような穏やかで暖かいエリザベスとジェレミーのキスシーン、ぜひ堪能してみてください。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』が楽しめる人の特徴

映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』が楽しめる人の特徴は、主に下記のようなものが考えられます。

  • ウォン・カーウァイ作品が好き
  • 色彩感覚の優れた作品が好き
  • ビビットな色合いの映像が好き
  • 自分を見失っている
  • ロードムービーが観たい
  • 失恋で傷心中
  • なんとなく旅に出たいと思っている
  • 人を信じることができなくなっている
  • 愛ってなに?

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』が好きな人におすすめの映画

ここでは、映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』が好きな人におすすめしたい映画をご紹介します。ぜひ併せてご覧ください。

天使の涙

殺し屋は顔も知らないエージェントとビジネスのパートナーを組み、順調に仕事をこなしていた。自分たちは良きパートナーだと思ってすらいた。しかしエージェントに惚れられてしまった殺し屋は、2人の関係に終わりが近づいていることを知る。さらに、殺し屋に恋したもう一人の女が現れる。一方、手痛い失恋をした女は、傷が癒えるまでの期限付きで、口がきけない男と付き合うこととなるが…。

ネオンきらめく香港の街、音と光。5人の若者たちの恋と青春群像を描いた香港の名匠ウォン・カーウァイによる映画作品。

全編にわたる極端なワイドレンズ、トレードマークのコマ落とし・コマ伸ばしの連続。アクション場面の躍動感、光と音の斬新でスタイリッシュな使い方など、ビジュアルセンスにさらに磨きのかかった一遍です。

製作は『黒薔薇VS黒薔薇』、『チャイニーズ・オデッセイ』など娯楽作品の監督を務めるジェフ・ラウ。撮影は『欲望の翼』以来コンビを組むクリストファー・ドイル。美術は『いますぐ抱きしめたい』以降のカーウァイと組むウィリアム・チョンなど、ウォン・カーウァイ作品の常連スタッフが集結しました。

出演は『妖獣都市・香港魔界篇』『シティー・ハンター』のレオン・ライ、『スウォーズマン/女神伝説の章』のミシェル・リー、『恋する惑星』『初恋』の金城武、『バタフライ・ラヴァーズ』『トワイライト・ランデブー』のチャーリー・ヤン、『チャイニーズ・オデッセイ』のカレン・モクいつも通りの豪華メンバー。

恋する惑星

香港を舞台に、若者たちのすれ違う恋模様を描いた作品で、ウォン・カーウァイ監督の名を世に知らしめた群像ラブストーリー。メインキャラクター刑事223号を金城武、警官633号をトニー・レオンが演じています。第14回香港電影金像奨で最優秀作品賞など3部門を受賞しました。

「その時 彼女との距離は0.1ミリ。57時間後 僕は彼女に恋をした―」

エイプリルフールに失恋した刑事223号。振られた日からちょうど1カ月後、自分の誕生日までパイン缶を買い続けている。恋人を忘れるため、その夜出会った女性に恋をしようと決めた223号は、偶然入ったバーで金髪サングラスの女性と出会う。一方、ハンバーガーショップの店員フェイは、店の常連の警官633号にあてられた元恋人からの手紙を店主から託される。その手紙には、633号の部屋の鍵が同封されていた。633号に恋心を抱いているフェイは、その鍵を使って部屋に忍び込む……。

「用心深くなりレインコートを脱がない女」「誕生日までパイン缶を集める刑事」「同じ曲をかけ続けるハンバーガー屋の店員」「失恋の傷が癒えず、寄せられる恋心には鈍感な警官」……。無国籍な香港を舞台に交錯する男女を描いた、90年代の空気感をリアルタイムに封じ込めた群像劇。

初恋

ウォン・カーウァイプロデュース、金城武&カレン・モク共演の異色青春ドラマ。

夢遊病の少女と夜間清掃員の青年。恋に臆病な男とその恋人が繰り広げる、2つの恋の行方を描くオムニバス形式の物語。ドキュメンタリータッチの描写を多用し、ライブ感を駆使したこの作品を監督したのは、DJ、デザイナー、ラッパーなどの活躍で香港のカルチャーシーンをリードするエリック・コット。

エターナルサンシャイン

『ヒューマンネイチュア』のミシェル・ゴンドリー監督が、同作同様チャーリー・カウフマンによる脚本を映画化。

ジョエルは、元恋人のクレメンタインが特定の記憶だけを消去する施術を受け、ジョエルの記憶を消したことを知る。自分もクレメンタインの記憶を消そうと同じ施術を受けるが、彼女を忘れたくないジョエルの深層意識は、施術に反抗する。必死で脳内のクレメンタインの記憶を守ろうとするが……。

まとめ

以上、映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の見どころや感想をご紹介しました。

失恋や挫折など、人々は生きていれば自分を見失うさまざまな体験をします。そんなとき、きっと誰しも失った何かを見つける旅に出かけます。物理的に遠くへ旅立つわけでなくても、です。

この作品では、傷心の主人公が旅の中で、知り合って間もない他人の中に自分の欠片があることに気が付きます。自分探しの旅とは、決してドラマチックなものでもなく、旅に出れば何かがすっきり解決するわけではありません。

ただ起こる物事を傍観し、その中で自分の中にある気づきを感じること。そしてその気づきに対し自分はどんな行動を取りたいか、考える。自分探しとはきっと、そんな淡々としたものなのではないでしょうか。

愛とは何か、信じるとは何か。大切なことを気づかせてくれる作品『マイ・ブルーベリー・ナイツ』。ぜひあなたも観てみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました!