アフィリエイト広告を利用しています

【ネタバレあり】韓国映画『オアシス』の見どころや感想をご紹介!それは愛か、依存か

こんにちは、映画監督志望の田中です!

毎日映画を観ている私が、おすすめ映画の感想や見どころをご紹介します。

本日ご紹介するのは、『ペパーミント・キャンディ』『バーニング 劇場版』などで知られるイ・チャンドン監督の珠玉の恋愛ドラマ、『オアシス』です。

昔から大好きな作品ではありますが、近所のTUTAYAでは長い間借りられていて、久しく観れていませんでした。しかし最近、amazon primeで配信していることを知り、やっと鑑賞することができました。

一言では片付けられない「純愛」と、重いテーマでありながら不思議な温かみを感じるラストシーン。やはり引き込まれてしまいました。

というわけで、ぜひおすすめしたい作品『オアシス』の感想や見どころを紹介していきます!

※ネタバレ含みます

概要

『ペパーミント・キャンディー』で注目を浴び、『バーニング 劇場版』で名匠としての不動の地位を確立したイ・チャンドン監督の手がける恋愛ドラマ。社会に適応することができない前科持ちの青年と脳性麻痺の女性の愛を描き、第59回ベネチア国際映画祭で監督賞等を受賞。『ペパーミント・キャンディー』で共演したソル・ギョングとムン・ソリが、主人公ジョンドゥとコンジュをそれぞれ演じ再共演。2019年3月『バーニング 劇場版』公開にあわせ、HDデジタルリマスター版が日本で初公開された。

あらすじ

暴行、強姦未遂に続き、ひき逃げ死亡事故で2年6ヶ月の間服役していたジョンドゥは、刑を終え出所したばかり。家族の元へ戻るジョンドゥだったが、これまで積み重なった素行の悪さから迷惑がられてしまう。ある日、ジョンドゥはひき逃げで死なせてしまった被害者家族のアパートを訪れる。そこで彼は、寂しげな部屋に取り残された被害者の娘、コンジュと出会う。重度の脳性麻痺である彼女は、部屋の中で孤独な空想世界に生きていた。ジョンドゥとコンジュは互いに惹かれ合い、純粋な愛を育んでいくが……。

感想

まずはざっくりとした感想を述べていきます。

それは純愛か、依存か

この作品は、前科3班の不器用な青年と、重度の脳性麻痺という身体障害を持つ女性の間に生まれた「愛」を描いた作品、ということになっています。

しかし、ジョンドゥとコンジュの間にあるものを、簡単に「愛」と呼んで良いものか、難しく感じます。

この作品をただの恋愛ドラマと言い切れないものにしているのが、序盤の展開です。コンジュの部屋にお見舞いに来たジョンドゥは、衝動的に彼女に強姦未遂のような行為をしてしまいます。気を失ってしまったコンジュに驚き、咄嗟に逃げ帰ってしまうジョンドゥ。

一般的に見れば恐ろしい体験をしたであろうコンジュですが、どういう心境の変化かは分かりませんが、ジョンドゥにコンタクトを取り再び会うことになります。そこで二人は意気投合し、仲を深めていきます。

物語序盤のジョンドゥの行為を、コンジュはどう感じていたか、それは誰にも分かりません。ジョンドゥが、自分自身が序盤でコンジュにした行為をどう捉えているかも、分かりません。二人の間に芽生えているものが、「愛」なのか、「拠り所」なのか。はたまた別の何かなのか。それも分かりません。

しかし、そんなことはどうでも良いじゃないかと思わせてくれる力が、この作品にはあります。二人の間に愛があっても、なくても、それでも二人がお互いを救いに感じていて、二人でいる時間が幸せならば、それで良いじゃないかと。

ジョンドゥの行為が許されざるものだったと感じる人も多いと思います。それは私も同意見です。しかし、初めて二人が結ばれた夜、コンジュを大切に扱うジョンドゥ。ラストシーン、コンジュのために必死で木を切るジョンドゥ。そんな、コンジュにとって王子様のようなジョンドゥがいたことも事実です。

偏見と生命の輝き

この作品では、終始ジョンドゥとコンジュが、周囲の人間から偏見の目を向けられ、眉をひそめられます。「前科者」のジョンドゥ、「脳性麻痺」のコンジュ。彼らはこの作品で、世間から淘汰されているように感じました。世の中は常に偏見で満ちており、そしてそれは自分たちだって例外じゃないと思い知らされます。

この映画では主人公がジョンドゥとコンジュであり、私たちは視聴者として二人に感情移入します。しかし、現実世界で一歩外に出れば、自分たちも誰かに同じように偏見の目を向けているかもしれないのです。そのくらい、人間というのは極めて純粋に、偏見の目を保つことをやめることはできません。それを痛感する作品でした。

しかし、偏見の視線が強ければ強いほど、その視線をものともせず二人の世界に没入していくジョンドゥとコンジュの輝きは増していくように感じます。その生命の輝きこそが、この作品の大きな魅力なのではないでしょうか。

二人は一緒にいる時間、とても幸せそうでした。そんな二人の姿、その輝きが、映画を観終わった今でも忘れられません。それと同時に、映画の中で憎く思った、偏見にまみれた周囲の人間たちに、自分も無意識になってしまっていないかと怖くなります。

ふいに温かい気持ちに包まれるラストシーン

この作品は、非常に重いテーマを扱っているにも関わらず、ラストは不思議な暖かさがあります。

周りの無理解な人間たちによって引き離されたジョンドゥとコンジュですが、きっとまた二人は再会できると思わせてくれるような希望的なラストシーン。

それに、コンジュはもう木の影を見て怖がることもないでしょう。

それまでの展開があまりに理不尽なため、ほっと安堵できるシーンでもあります。そのため、何度観ても途中で心が苦しくなる作品ですが、不思議と何度も観たいと思えます。

見どころ

次に、作品の見どころを深掘りしていきましょう。

圧巻の演技

大きな見どころは、主役お二人の演技です。

終始落ち着きがないソル・ギョングさん演じるジョンドゥは本当に存在しているかのようなリアリティ。

そしてコンジュを演じたムン・ソリさん。実際に脳性麻痺の患者さんに演技指導を受けたそうで、本当に驚きの演技でした。

この映画は、自分でも信じられないくらい主人公に感情移入してしまい、終盤は心がぐちゃぐちゃになってしまうんですが。そこまでさせる要因は、役者さんの演技力だと感じます。

まるで映画の中の人物が本当に存在していると思わせてくれるお二人の演技、ぜひ堪能してください。

タイトル「オアシス」の意味

この映画のタイトルである、『オアシス』。その意味を考えさせられます。

まず、一般的な「オアシス」とはどういう意味なのでしょうか。調べてみました。

1.砂漠の中で、水が湧き、樹木の生えている所。

2.疲れをいやし、心に安らぎを与えてくれる場所。憩いの場。

goo辞書

潤っていて、心が安らぐ場所が思い浮かびますね。つまり本作で言うと、世間から疎外された2人が見つけた、2人だけの居場所という意味にも取れます。とてもしっくりくるタイトルですね。

どんな人間も、退屈な日常や、思うようにいかない現実から抜け出せる自分のオアシスを探しているのかもしれません。でも、決まってそういった「オアシス」は、世間から淘汰されてしまうような場所。概念でしかない正義により、簡単に取り上げられてしまう。脆く儚いからころ、オアシスは自分の心に、憧憬のように強く輝くのです。

混ざり合う現実と幻

作中には、何度も幻想と現実が混ざり合う演出がなされます。あまりにも憎い演出です。

脳性麻痺を患うコンジュが、ジョンドゥの隣に立ち、一緒に歌ったり踊ったりする。それはコンジュの願望なのかもしれません。やりきれないような気持ちになる反面、それが二人に見えている現実なのかもしれないとも感じます。

ほかにも、白い鳥や蝶々など、コンジュの空想の産物が劇中にはしばしば登場します。

それらはすべてとても美しく、儚い。どうか彼女の空想が今も取り上げられず、眩しく輝いていることを祈るばかりです。

『オアシス』が好きな人におすすめの映画

ここでは、『オアシス』が好きな人におすすめの映画をご紹介したいと思います。ぜひ併せてチェックしてみてください!

ペパーミントキャンディ

韓国現代史を背景に、1人の男性の20年間を描いた人間ドラマ。韓国のアカデミー賞と呼ばれる「大鐘賞映画祭」で作品賞など主要5部門受賞。『オアシス』『シークレット・サンシャイン』のイ・チャンドン監督が手がけた長編第2作です。

1999年の春。仕事も家族も失い、絶望の淵にいるキム・ヨンホ。彼は旧友たちとのピクニックに、場違いなスーツ姿で現れる。そこは、20年前初恋の女性、スニムと訪れた場所であった。線路の上に立ったヨンホは、向かってくる電車に「帰りたい!」と叫ぶ。すると彼の人生が巻き戻されていく…。自らを崩壊させた妻、ホンジャとの生活。惹かれ合いながらも、結局結ばれることはなかったスニムへの愛。兵士として遭遇した光州事件。最後にヨンホの記憶の旅は、人生が最も美しく純粋だった20年前にたどり着く…。

2019年3月、『バーニング 劇場版』公開にあわせ、4Kレストア・デジタルリマスター版が日本で初公開された。

おすすめポイント

『オアシス』と同様、イ・チャンドン監督の人間ドラマということでおすすめに挙げさせていただきました。出演者も、『オアシス』と同様ソル・ギョングとムン・ソリということで、また『オアシス』とは違った二人の演技を楽しめるのではないでしょうか。

この作品は、仕事も家族も失った絶望の最中にいるヨンホが、自身にとって一番美しく純粋だった20年前に帰りたいと願い、記憶の旅に出るというストーリー。ヨンホの現状の悲惨さと、20年前の初々しい純粋さの対比が残酷な本作。もう戻らない過去への恋焦がれた経験は、誰にでもあるでしょう。そして現実を受け止め、過去を過去と認めて諦めることは、非常に勇気がいることかもしれません。それでも私たちは、常に「現在」しか生きられない。だから、どんなに惨めでも辛くても、現在を生きていくことでしか過去の憧憬を消すことはできない。

「人生とは」という普遍的なテーマについて考えさせる壮大な作品です。

バーニング 劇場版

『ペパーミント・キャンディ』『オアシス』の名匠イ・チャンドン監督の8年ぶりの監督作品。1983年に村上春樹が発表した短編小説『納屋を焼く』原作。物語を大胆にアレンジした、韓国の若者の闇を描くミステリードラマ。

小説家志望の青年、ジョンスは、ひょんなことから幼なじみの女性ヘミと偶然再会する。ジョンスは、ヘミがアフリカ旅行へ行く間、飼い猫の世話を頼まれることになる。旅行から戻ったヘミは、アフリカで知り合った謎めいた金持ちの男、ベンをジョンスに紹介する。ある日、ベンはヘミと共にジョンスの自宅を訪れる。そしてベンはジョンスに「時々ビニールハウスを燃やしている」という秘密を打ち明ける。そしてその日を境に、ヘミが忽然と姿を消してしまい…。

『ベテラン』のユ・アインが主演、ベンをテレビシリーズ『ウォーキング・デッド』のスティーブン・ユァン、ヘミを新人女優チョン・ジョンソが演じた。

第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品、国際批評家連盟賞受賞。

おすすめポイント

『バーニング 劇場版』も、『オアシス』同様にイ・チャンドン監督作品としておすすめしたいです。村上春樹の短編小説『納屋を焼く』が原作ということで、村上春樹作品が好きな方にも観てもらいたい本作。

大胆なアレンジを加えているものの、村上作品の持つ独特の浮遊感は健在。

また、舞台が韓国ということで、韓国の若者が抱える問題や格差社会についても描かれています。

ポーカーフェイスの主人公ジョンスがベンの闇に触れ、じわじわと最悪の結末を迎えるというストーリー展開は、ミステリードラマとして秀逸です。ヘミが恋をしたベンという謎めいた男の存在が非常に優れたスパイスとなっています。

ダンサーインザダーク

『奇跡の海』のラース・フォン・トリアー監督が、アイスランドのシンガービョークを主演に撮った人間ドラマ。過酷な運命に翻弄されながら、息子のためにすべてを投げ打つ悲劇の主人公、セルマの姿をミュージカル調に描いた本作。2000年・第53回カンヌ国際映画祭で最高のパルムドール受賞。セルマ役を熱演したビュークは女優賞を受賞。

舞台はアメリカの片田舎。チェコ移民のセルマは、息子ジーンと2人、慎ましく暮らしていた。セルマは隣人たちの優しい友情に包まれ、生きがいのミュージカルを楽しむ質素ながら幸せな日々に満足していた。しかし彼女には、ある悲しい秘密があった…。

2000年の公開時、日本でも興行収入24.2億円の大ヒットを記録しました。

おすすめポイント

『ダンサーインザダーク』は、過酷な現実を超えるために幸せな夢想をする主人公、セルマの姿がコンジュに重なります。

理不尽で偏見に満ちた周囲と、それに対抗する主人公という構図は、やはり観ていて辛い気持ちになります。そして『オアシス』以上に救いのないラストシーン。

人間ドラマとして非常に優れており、現実と夢が混ざり合った演出は秀逸です。しかし、精神状況によっては、観賞後しばらく引きずってしまう可能性もあるので、観る時は注意が必要です・・・!

まとめ

以上、『オアシス』の見どころや感想をご紹介しました。

「純粋な二人の愛」と「偏見に満ちた世界」という対立構造が皮肉なほど秀逸な本作。重いテーマでありながら温かく印象的なラスト。幸せを願わずにはいられない主人公二人と、偏見の目に晒されれば晒されるほど輝く生命の輝き。

どれをとっても素晴らしいとしかいえない恋愛ドラマです。ぜひご覧ください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!