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【ネタバレあり】映画『重力ピエロ』感想

こんにちは、映画監督志望の田中です!

毎日映画を観ている私が、おすすめしたい映画の見どころや感想をご紹介します。

本日紹介する映画は、『重力ピエロ』です。

同名の伊坂幸太郎ベストセラー小説の実写映画作品です。

個人的に、この映画に出てくる家族、映画史上最も「最強」だと思っています。本日はこの重力に争い浮遊する家族たちの魅力について語らせていただきます。

ぜひご覧ください!

※ネタバレ含みます

概要

伊坂幸太郎の直木賞候補になったベストセラー『重力ピエロ』を実写映画化。監督は『Laundry』を手がけた森淳一。泉水役に加瀬亮、春役に岡田将生を起用。

あらすじ

大学院で遺伝子の研究をしている兄の泉水と、自分をピカソの生まれ変わりだと思っている弟、春。そして、優しい父、美しい母。重力を感じさせないように陽気に過ごす家族には、実は辛い過去があった。

兄弟が大人になった頃、事件は始まる。仙台市で起こる謎の連続放火事件。現場近くには、必ずグラフティアートが残されている。火事を予見するような落書きと、遺伝子暗号の奇妙なリンクを不審に思う和泉は、事件の解決に乗り出す。その過程で、24年前から現在へと繋がる家族の謎が明らかになっていき…。

感想

まずは『重力ピエロ』の感想をご紹介します。

最強の家族

この作品の大きな魅力は、「最強の家族」の存在。主人公の和泉と春、そして穏やかな父と明るく美しい母。

幸せなこの家族には、悲しい過去がありました。弟の春は、母と強姦魔の間に出来た子供だったのです。

「楽しく生きていれば、地球の重力なんて消してしまえる」

そう言って、重くのしかかる問題を笑い飛ばします。そんなことできるのかと思うものの、小日向文世演じる父の笑顔には不思議な説得力があります。その笑顔の威力は父が重い癌にかかっても、変わることはありませんでした。

母亡き後も、父と兄弟二人は仲睦まじく関係を築いていきます。春と父の絆は、和泉と同様にとても強固なものに感じます。そんな家族の姿を見ていると、血のつながりなど関係ないと思わせます。

実の父である強姦魔と相対した春は、彼に「僕の父親は癌と戦っているあの人だけだ」と言い放ちます。

春は「血」以上の繫がりを強く信じていたのです。

春が強姦魔を殺害した後、父た対峙するラストシーンは非常に印象的です。隠し事はないかと問う父に、春は何もないと返します。父は、「春は嘘をつく時、唇を触る。お父さんには何でもお見通しだ。」と笑います。それは、まさに父の癖でもありました。

このシーンを見ると、遺伝をも超越する家族の力を感じざるを得ません。

春が2階から落ちてきた

この作品は、「春が2階から落ちてきた」と言う和泉のセリフで始まり、そしてこのセリフで幕を閉じます。

これは原作の小説でも同様なのですが、なかなかに印象的なファーストゼリフなのではないでしょうか。

「春が2階から落ちてきた」

最初はなんとも詩的なセリフに感じます。まるで急な春の訪れを告げるような一文ですが、何より面白いのはこれが物理的な事実だということ。実際、このセリフと共に和泉の弟、「春」が、学校の2階から野球のバットを持って落ちてくるのです。

そして女子生徒を襲おうと企んでいた男子生徒をバットで成敗します。

まるでヒーローのような春です。

ラスト、父無きあと、家族の家で二人で過ごす和泉と春。家の2階から、春が地上にいる和泉のもとに落ちるシーンで終わります。

ここでも、「春が2階から落ちてきた」です。

個人的なことですが、物語の始まりとラストのセリフが同じというこの様式美、とても好きです。それが効果的に作品にハマっていれば尚更、拍手喝采したくなってしまいます。

とても素敵なセリフ、そして美しいシーンですね。

母の喪失、兄弟の深い傷

作中、強姦魔に襲われた過去を持つ母は、その後交通事故で亡くなります。それは確かに交通事故なのですが、周囲は「過去の傷が関係しているのでは」と詮索したがります。

真意は分かりません。何にせよ、母を喪失したことで、和泉と春という兄弟は深い傷を共有するようになります。

母が強姦事件に巻き込まれたというその事実は、兄弟のその後の人生まで大きな影響をもたらすこととなります。特に春は、性的なるものいに異常な嫌悪感を示すようになり、恋人を作ることもしません。

自分自身の存在そのものが、母の深い心の傷そのものだという事実は、どれほど春を追い込んだのでしょうか。想像するだけで胸が痛くなります。

そして兄弟二人は、図らずとも同時期に母を襲った強姦魔の男を殺す計画を立てるのです。

結果、男を殺したのは春でしたが、春が殺していなければ和泉が殺していたということになるでしょう。

春の犯した「罪」について

事件後、出頭しようとする春に対し、和泉は「検察や裁判官にとやかく言われる筋合いはない。このことについてお前以上に考えている奴はいないんだから」と止めます。

このシーンはとても考えさせられます。

春がしたことは、法で裁かれるべき罪です。この世界に生きている限り、その事実からは逃れられません。

それでも、確かにそこに彼ら兄弟、そして家族の「正義」は存在します。そしてこの件について、誰よりも向き合ったのは家族たちです。赤の他人の検察や裁判官ではありません。それも事実です。

難しいです。春が出頭しなかったことに引っかかる視聴者も少なからずいると思います。殺人を正当化することに是非を唱える人もいるでしょう。

それでも、彼らは彼らなりの事情があった。この物語を見ている傍観者とも言うべき私たちだけは、この事件をそっと見なかったことにしておいても良いのではないかと思います。少なくとも私はそう思います。

見どころ

次に、映画『重力ピエロ』の見どころについて深掘りしていきましょう。

繊細な春のミステリアスな人物描写

この作品のメインキャラクター、春。重すぎるバックボーンを背負った青年ですが、どこか浮遊感があり爽やかに描写されています。

その繊細さはミステリアスな印象を受け、非常に魅力的です。演じた岡田将生さんの手腕なのかもしれませんが、ダークな側面を持つキャラクターではあるものの、絶妙にライトに描かれているのが印象的でした。

特に「笑顔」「不機嫌な表情」など、些細な表情の魅力がすごいと感じました。笑う時は、その場にいる誰もを幸せにしてしまうような笑顔なのですが、不機嫌であっても、マイナスな印象を与えないんですね。

どんな表情でも、じっと見ていたくなる。それは容姿の美しさ以上の、演者の実力からくるものなのでしょう。

余談ですが、岡田将生さんが出演している『ドライブ・マイ・カー』でも同様の印象を受けました。容姿が注目されがちな俳優さんですが、非常に演技が上手いと感じます。

見守っていたくなる兄弟

本作の魅力はなんといっても、兄弟の仲の良さ。

かつてはお揃いの服装ばかりしていた和泉と春、大人になっても定期的に会っており、お互いの近況を報告したりしています。

春は、何か大事な場面で、必ず兄の和泉を誘います。「兄貴がいると安心するんだ」と言う春は、弟の顔をしています。

正義感の強い真面目な和泉も、いつも春を気にかけており、弟の幸せを願っているのが伝わります。

和泉は、春の犯した罪を、何があっても肯定してくれる存在でもあります。春にとって、そんな兄の存在がどれほど心強いものなのか。

色々なことがありましたが、これからも二人で仲良く暮らしていて欲しい。そう思える、魅力的な兄弟です。

謎解き要素も

作中では、仙台市連続放火魔事件が起きます。放火現場の近くには、必ずグラフティアートがある。このグラフィティアートと遺伝子ルールの奇妙なリンク。そして犯人のしたかったこととは…。

本作は家族愛やヒューマンドラマの要素が強いですが、謎解きミステリーとしても楽しめる作品です。

作品が進んでいくにつれ、遺伝子研究をしている泉によって徐々に紐解かれる謎。その真相が分かった時は…少しほっこりするかもしれません。

『重力ピエロ』が楽しめる人の特徴

映画『重力ピエロ』を楽しめる人の特徴は、主に下記のとおりです。

  • 伊坂幸太郎作品が好き
  • 小説の実写化に抵抗がない
  • 謎解きが好き
  • ミステリー作品が好き
  • ヒューマンドラマが好き
  • 岡田将生が好き
  • 音楽込みで映画を観たい
  • どちらかといえばハッピーエンドが好き
  • 淡々と進んでいく映画が好き

『重力ピエロ』が好きな人におすすめの映画

ここでは、映画『重力ピエロ』が好きな人におすすめしたい作品をご紹介します。ぜひ併せてチェックしてみてください!

Laundry ランドリー

幼い頃頭部に傷を負い、脳障害を残す青年、テル。彼は祖母が経営するコインランドリーで、洗濯物を盗まれないよう見張りを続ける。そこにはさまざまな人物がやって来て、そして帰っていく。彼にとっては、このコインランドリーだけが世界だった。ある日、水絵という女性がコインランドリーにやって来る。テルが水絵の置き忘れた洗濯物を届けたことから、言葉を交わすようになる。しかし水絵は、突然故郷へと帰ってしまう。最後にコインランドリーにやって来たとき、忘れたワンピースを残して。テルは、ワンピースを彼女に届けるため、初めて外の世界へと足を踏み出すことになる……。

おすすめポイント

本作は、『重力ピエロ」を手がけた森淳一監督の作品ということで、おすすめさせていただきました。

『重力ピエロ』同様、人間の暖かさを感じられる作品です。そして音楽と映像のマッチ具合も、『重力ピエロ』同様です。主演の窪塚洋介さんと小雪さんの演技や雰囲気も素敵な作品。浮遊感と独特な間が魅力的です。

ドライブ・マイ・カー

村上春樹の短編小説集『女のいない男たち』内に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、『偶然と想像』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した濱口竜介監督により映画化した作品。

主人公の家福を西島秀俊、ヒロインであるみさきを三浦透子、家福と因縁のある俳優高槻役を岡田将生、家福の亡き妻、音を霧島れいかが演じる。

本作は2021年の第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された。そして、日本映画で初となる脚本賞を受賞したほか、国際映画批評家連盟賞やAFCAE賞、エキュメニカル審査員賞といった3つの独立賞も受賞する。また、2022年の第94回アカデミー賞では日本映画史上初の作品賞にノミネートされた。ほか、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせ4部門でノミネートする。日本映画としては『おくりびと 』以来の13年ぶりになる国際長編映画賞(旧外国語映画賞)を受賞。そのほか、第79回ゴールデングローブ賞最優秀非英語映画賞受賞、アジア人男性初となる全米批評家協会賞主演男優賞受賞など、全米の各映画賞でも注目を集めた。日本アカデミー賞では最優秀作品賞はじめ、計8冠に輝く。

おすすめポイント

先述したとおり、岡田将生さんの演技が味わえる作品です。

この作品で岡田さんは、主人公家福の妻の浮気相手として登場します。恵まれた容姿で何不自由なく過ごしてきたが、不祥事を起こし落ち目を迎えている役者というリアルな役所を、空虚な空気感をまとい見事演じ切っています。

『重力ピエロ』で岡田さんの演技に惹かれた方は、ぜひ『ドライブ・マイ・カー』も観てみて欲しいです。

特に車内での家福と高槻の会話は必見です。岡田さんの独白シーンが素晴らしいです。何度でも観たくなります。

ゴールデンスランバー

山本周五郎賞を受賞した、伊坂幸太郎の逃亡劇を『アヒルと鴨のコインロッカー』『フィッシュストーリー』で伊坂作品の監督を手がけた中村義洋が映画化。主演に堺雅人。共演に竹内結子・吉岡秀隆・香川照之・大森南朋・柄本明などが起用。野党初の首相の凱旋パレードが行われている仙台市内で、ラジコンヘリの爆弾を使った首相暗殺事件が起きた。時同じくして、旧友・森田と久しぶりの再会を果たしていた青柳は、突如現れた警官から発砲され追われる身となってしまう。

おすすめポイント

こちらは、伊坂幸太郎作品の実写映画化として推したい作品です。伊坂作品の実写映画は数多くありますが、その中でも特に満足度が高く、エンターテイメント性に長けているのが本作『ゴールデンスランバー』。

堺雅人演じる青柳や追われる身となり、さまざまなピンチから難を逃れまくるドタバタ劇。すべて仙台で撮影されているのもポイントです。

ジェットコースターのように展開される作品で、淡々と進む『重力ピエロ』とはまた違った良さを味わえます。ラストの伏線の回収はあまりにも美しく、感嘆不可避でしょう。

『重力ピエロ』のような淡々と進むシリアス寄りの人間ドラマを好む方は、『アヒルと鴨のコインロッカー』もおすすめです。

まとめ

以上、映画『重力ピエロ』の感想や見どころをご紹介しました。

重力ピエロは原作小説も映画も大好きなので、ずいぶんと主観が多かったかと思いますが、ご愛嬌ということで…!

作品全体のしっとりと温かい空気感、登場人物の浮遊感のあるセリフ、思いテーマながら軽やかに魅せられる俳優陣の手腕。ぜひご堪能ください。

ここまでお読みいただきありがとうございました!