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【ネタバレあり】ミケランジェロアントニオーニ『欲望』の見どころや感想を紹介!おしゃれ不条理劇の金字塔

こんにちは、映画監督志望の田中です!

映画を毎日観ている私が、おすすめの映画の見どころや感想をご紹介します。

今回紹介するのは、1966年公開の映画、『欲望』です。イタリアの名匠ミケランジェロ・アントニオーニ監督の初の英語作品。不条理な展開が魅力のアートかつサスペンスの名作です。

※ネタバレあり

概要

『情事』『砂丘』『太陽はひとりぼっち』などで知られるイタリアの名匠、ミケランジェロ・アントニオーニ監督が手がけた初の英語作品。アルゼンチン作家フリオ・コルタサルの小説「悪魔の涎」をベースに描いた不条理サスペンス。

第20回カンヌ国際映画祭にて、パルムドールを受賞。“スウィンギング・ロンドン”と呼ばれていた60年代イギリス・ロンドンの若者文化を描いた作品としても有名。

あらすじ

若くして成功した、ファッションカメラマンのトーマス。彼はある日公園で密会する、中年男性と美女のカップルを盗撮する。盗撮されたことに気づいた女性に、フィルムを渡すように詰め寄られたトーマス。彼は彼女のヌード撮影を条件に取り引きに同意するが、結局渡したのは偽のフィルムだった。改めて本物のフィルムを現像したトーマスは、その写真にどこか違和感を覚える。引き伸ばすと、そこには銃を持った男と死体らしきものが写り込んでいて…。

感想

まずは、映画『欲望』の大まかな感想をお伝えします。

不可解でシュールなシーンの応酬

この作品は、不条理サスペンスと謳われている通りシュールで不可解なシーンの応酬であり、それが大きな魅力でもあります。

たとえばモデル志望女性2人がトーマスのスタジオでめちゃくちゃに暴れたり、突然仕事仲間の情事に遭遇してしまったり。やや盛り上がりにかける謎のライブへの潜入、白塗りパントマイマーとの遭遇など…。

一見すると意味の分からないシーンの連続です。おしゃれ不条理劇としても知られる本作。まずはこのシュールさを楽しめてこそ、この映画を味わい尽くせるでしょう。

写真家が写真に騙される?

主人公トーマスは、有名雑誌でファッションモデルの写真を撮っている売れっ子カメラマン。そんな彼は、たまたま公園で撮った男女の密会写真に映った死体がきっかけで、どんどん裏の世界へと嵌っていきます。

しかし、死体はどこかに消えない、そこに死体があったという証拠すらなくなります。写真家が写真に騙されてしまったわけですね。

この作品は、「人間は自分が見たいものを見る」というメッセージが込められていると感じました。そして、この作品の登場する多くの人物は、目に見えないものを信じている。そして「ない」ものを「ある」ように信じて振る舞っている。

「自分が見ているものだけが現実ではない」ことを知ったトーマスは、どのように「ない」ものが「ある」ように、そして「ある」はずのものが「ない」世界を受け入れ、順応し生きていくのか…。

見どころ

次に、映画『欲望』の見どころを深掘りしていきましょう。

何をしていてもどこか面白い主人公

この作品の面白い点は、何をしてもどこか面白い主人公の所作にあると感じました。

主人公トーマスは若くして成功した売れっ子写真家で、どちらかでいうと二枚目キャラクターとして設定されています。しかし、トーマスの一挙手一投足をよく見ていると何故か面白い。普通にしていてもどこか滑稽な感じがします。

それがあえてなのか、滲み出てしまっているものなのかは分かりませんが、とにかくトーマスを見ているだけで不思議と愉快な気持ちになってくるのです。

彼がポーカーフェイスというのもシュールな面白さを醸し出しているかもしれません。

歴史に残るラストの「エアテニス」シーンは必見

この映画の大きな見どころは、終盤の「エアテニスシーン」でしょう。

白塗りパントマイム集団と公園で遭遇したトーマス。パントマイム集団はおもむろにテニスコートへ入り込み、エアテニスを始めます。この時点で視聴者は置いてかれており、何が起きたか分からずぼうっと傍観するしかありません。それはトーマスも同じで、異様なエアテニスの光景をただただじっと眺めています。

しかし自体は急展開を迎えます。あるはずのないテニスボールがコートの柵を越え、トーマスの背後へ落ちるのです。正確には落ちた様子は見えないのですが、明らかにあるはずのないボールがあるように、視聴者も、トーマスも錯覚してしまうのです。

「ないはずのボールがあるように見える」。

この演出が意味するところは、主人公にとって、そして視聴者にとって、何が見えいて、そして何が見えていないのか。何があって、何がないのか。それが曖昧になっているということです。

ただただ他人事として不条理な世界を楽しんでいた視聴者は、それが他人事でないことに初めてこのシーンで気づくのです。

60年代イギリスの若者カルチャーが楽しめる

映画『欲望』の魅力は、なんといっても60年代イギリスの若者ポップカルチャーが味わえる点でしょう。

美しく当時最新のファッションに身を包んだモデルたち。おしゃれな街並みや車のデザイン。ロックとジャズの喧騒。

若者たちの奔放さが垣間見える60年代の「スウィンギング・ロンドン」を楽しめるが本作です。不条理劇やサスペンスが得意でない人でも、動く写真集としてこの映画を楽しむのもまた一興でしょう。

『欲望』が楽しめる人の特徴

映画『欲望』が楽しめる人の主な特徴は、下記のとおりです。

  • アートな映画が好き
  • シュールな映画が好き
  • 不条理劇を楽しみたい
  • おしゃれな映画が好き
  • 登場人物のファッションを楽しむのが好き
  • 美女がたくさん出てくる映画が好き
  • 60年代のポップカルチャーが好き
  • ちょっと不気味な映画に惹かれる

『欲望』が好きな人におすすめの映画

ここでは、映画『欲望』が好きな人におすすめの映画をご紹介します。

ジュテームモワノンプリュ

廃品運搬の仕事をして暮らす恋人同士の青年クラスキーとパドヴァン。ある日二人は立ち寄ったバーで、ボーイッシュな少女、ジョニーと出会う。やがてクラスキーとジョニーの間に恋心が芽生えるが、そんな二人にパトヴァンが嫉妬し…。

主題歌はジェーン・バーキン とセルジュ・ゲンスブールの同名の名曲『Je t’aime moi non plus』。劇中に何度も登場する、非常に切なく印象的な楽曲です。

おすすめポイント

『欲望』にも登場したジェーン・バーキンが主人公ジョニーを演じている本作。『欲望』でジェーン・バーキンの美しさに惹き込まれた人は、ぜひこちらの作品も観てほしいです。

ジェーン・バーキンの美しさが遺憾無く発揮されているだけでなく、不条理な展開や会話なども『欲望』に通づる魅力があります。ジェーン・バーキン演じるジョニーのミステリアスな雰囲気が魅力で、何をしていても、何を話していても絵になります。

バーのパーティで踊るクラスキーとジョニーのシーンはとても素敵です。

気狂いピエロ

1965年にジャン=リュック・ゴダールが発表した『気狂いピエロ』。ヌーベルバーグの金字塔として語り継がれている代表作です。

「ピエロ」と呼ばれる男、フェルディナンは退屈な結婚生活から抜け出したい衝動に駆られていた。そんなとき、偶然再会したかつての恋人マリアンヌと一夜を過ごす。翌朝見知らぬ男の死体を見つけた2人は、逃避行を始める。しかしマリアンヌは道中でフェルディナンに嫌気がさし、彼を裏切ってしまう…。

2016年デジタルリマスター&寺尾次郎氏の新訳版が公開される。2022年に2Kレストア版で公開。

おすすめポイント

この作品は、「死体」をきっかけに物語が進行していく点も『欲望』に似た魅力があると感じました。同じ60年代に作られたおしゃれ不条理な作品としても、通づるものがあると思います。

ゴダール作品の中でも、一番好きな作品です。

時折入る男女の会話調のモノローグが斬新でおしゃれ。今見ても新しいと思える本作。2022年4月に2Kレストア版で公開されるということで、要チェックですね。

まとめ

以上、ミケランジェロアントニオーニ監督『欲望』の見どころや感想をご紹介しました。

世の中にはたくさんの映画が存在しますが、この頃からこんなにめちゃくちゃで面白い作品が作られていたとなると、今ももっと自由で個性的な映画がたくさんあって良いと感じます。

『欲望』は学生時代に世界史の教科書で観た記憶があるのですが、どのように紹介されていたのかは定かではありません。

おそらく「60年代イギリスのカルチャー」としてツィギーなどと同じカテゴリで紹介されているような気がしますが、「シュールレアリズム」作品の金字塔として紹介されていたような記憶もあります。

なんにせよ、学生だった当時の私が、物心ついてから初めて見た実写映画といっても過言ではありません。こんな前衛的で魅力的な作品を観てしまっては、映画の世界にうっかり足を踏み入れてしまったのも致し方ないことのように思いますね。

以上、読んでいただきありがとうございました!