「煮詰まる」の正しい使い方【誤用するとトラブルが起きる!?】

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会議や打ち合わせをしていて、話し合いがまったく前に進まないことがありますよね。だれもがイライラする時間に、「いいアイデアがでなくて煮詰まっているなあ」と呟いた方もいるのではないでしょうか。

じつは、このような「なにかが行き詰まってしまって結論が出せない状態」ときに「煮詰まる」を使うのは誤り!

「煮詰まる」の意味とは?

では、「煮詰まる」の正しい意味とはなんでしょうか?

に‐つま・る【煮詰(ま)る】 の解説

[動ラ五(四)]

1 煮えて水分がなくなる。「汁が―・る」

2 討議・検討が十分になされて、結論が出る段階に近づく。「問題が―・ってきた」→生煮え

出典:goo辞書

これを見て「えっ⁉︎」と思った方も多いはずです。というのも、「煮詰まる」という言葉は多くの人が誤用しているというデータも出ているほど。

文化庁が発表した平成25年度「※国語に関する世論調査」では、「7日間に及ぶ議論で、計画が煮詰まった」を、本来の意味とされる「(議論や意見が十分に出尽くして)結論の出る状態になること」で使う人が51.8パーセント、本来の意味ではない「(議論が行き詰まってしまって)結論が出せない状態になること」で使う人が40.0パーセントという結果が出ている。

出典:goo辞書

このように、本来の意味ではない意味で「煮詰まる」を使用している人が全体で40%いるのです。

さらに、16歳から30代までに範囲を絞ってみると、なんと約70%が誤用しているという結果も出たとのだとか。

40代以上では誤用が比較的少なかったことから、年代別で大きく使い方が異なる言葉なようです。

※「国語に関する世論調査」とは、文化庁が1995年(平成7年)から行なっている国の正式な世論調査。漢字や慣用句・敬語・外来語などの理解度や関心度、また会話や手紙などの言語によるコミュニケーションの現状などの日本語に対する人々の意識を調査し、国語施策の参考にしている。

「煮詰まる」の語源は?

多くの人が誤用している「煮詰まる」ですが、その語源を知ることで誤った意味を払拭しやすくなるはず。

「煮詰まる」は料理で使われる用語「煮詰める」が由来です。言葉からも煮物をイメージできますよね。

「煮物料理を充分に煮詰めて、水分が飛んで完成に近づいた状態」から、「煮詰める」には「話し合いを充分に行って、結論がしっかり出せる状態」のことを表現するようにもなったのです。

に‐つ・める【煮詰める】 の解説

[動マ下一][文]につ・む[マ下二]

1 煮て水分を少なくする。「―・めてとろりとさせる」

2 討議・検討を十分に重ねて結論を出す。「計画を―・める」

出典:goo辞書

「煮詰める」と、先に紹介した「煮詰まる」の意味は似ていますよね。

このように、煮物料理を煮詰めることをイメージすれば、本来の正しい意味を頭に入れやすいのではないでしょうか。

煮物料理は煮込めば煮込むほど味が濃くなっていきます。それと同じように、「会議で話し合いを重ねれば重ねるほど、内容の濃い結論を導き出すことができる」イメージで「煮詰まる」を捉えてみてください。

「煮詰まる」を誤用している人が使いたい言葉は「行き詰まる」

では、誤用している人は「煮詰まる」をどんな意味で捉えているのでしょうか?

先述した「国語に関する世論調査」では、「(議論が行き詰まってしまって)結論が出せない状態になること」と誤用されているとのこと。

つまりこれは、本来の「煮詰まる」とはまったく反対の意味です。「会議や話し合いを重ねた結果、よりよい結論が出せる状態」が「煮詰まる」の正しい意味ですからね。

では、誤用で表現されている「いい結論が出せない」はどの言葉で表現すればいいでしょうか。

それは「行き詰まる」です。

ゆき‐づま・る【行(き)詰(ま)る】 の解説

[動ラ五(四)]

1 行く手がさえぎられて先へ行けなくなる。行きどまりとなる。いきづまる。「突き当たりで道が―・る」

2 物事がうまく先へ進まなくなる。いきづまる。「経営が―・る」

出典:goo辞書

行き詰まるであれば、「前を遮られて先へ行けない」という意味から、「話し合いが前に進まない」という意味を言い表すことができます。

そのため、「煮詰まる」を誤用したままビジネスの場で上司に伝えた場合、まったく逆の状況を伝えてしまうことになります。

「会議がうまく進んでいない」のに、「会議がとてもうまく進んだ」と伝わってしまえば、情報共有が大きくズレて大惨事になるかもしれません。

物事がうまくいっていないときは、「煮詰まる」ではなく「行き詰まる」を使うようにしましょう。

「行き詰まる」「煮詰まる」の類語

それぞれの言葉の正しい意味をイメージしやすくするために、「行き詰まる」と「煮詰まる」の類語を紹介しましょう。

見比べてみると、意味がまったく異なることが実感できるはずです。

「行き詰まる」の類語

停滞する・流れが悪くなる・進展が止まる・一向に進まない・立ち往生する

「煮詰まる」の類語

終局に向かう・最終地点に近づく・話し合いがまとまる・意見が出尽くす・アイデアがすべて出る

辞典では「煮詰まる」に「行き詰まる」の意味も追加?

紹介してきたように、本来の「煮詰まる」は、会議や話し合いがいい方向に向かっていることを意味します。

しかし、誤用が若者世代で多く見受けられるため、近年の辞書には「行き詰まる」に近い意味が追加されているとのこと。

「広辞苑 第6版」(平成20年 岩波書店)

に-つま・る【煮詰る】

[1]煮えて水分がなくなる。

[2]議論や考えなどが出つくして結論を出す段階になる。「ようやく交渉が-・ってきた」

[3]転じて,議論や考えなどがこれ以上発展せず,行きづまる。「頭が-・ってアイデアが浮かばない」 

出典:文化庁月報

「日本国語大辞典 第2版」(平成15年 小学館)

に-つま・る【煮詰】

[1]煮えすぎて水分が蒸発してしまう。

[2]議論や考えなどが出つくして,問題点が明瞭な段階になる。

[3]問題や状態などが行きづまってどうにもならなくなる。

出典:文化庁月報

それぞれの「3」で述べられている意味のように、言葉の使われ方から意味が追加されているようです。

しかし、2つの対比する意味が混ざっていて困惑することも考えられるので、ビジネスの場など明確な発言が求められる場では、「行き詰まる」と「煮詰まる」をしっかりと使い分けるのがいいでしょう。

この記事を書いた人

MIYAMOTO

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