この記事では、「全然」という言葉の使い方について説明します。
「全然」には、いくつかの意味があり、使い方も異なります。たとえば「全然」の後に続けるとして、「全然大丈夫」「全然違う」など、まったく意味合いの違う言葉が入ります。今回は、「全然」の正しい使い方を使用例交えてご紹介します。ぜひ、ご参考にしてください。
目次
「全然」の意味とは
まずは、「全然」の意味について理解しておきましょう。
[ト・タル][文][形動タリ]余すところのないさま。まったくそうであるさま。
[副]
1 (あとに打消しの語や否定的な表現を伴って)まるで。少しも。「全然食欲がない」「その話は全然知らない」「スポーツは全然だめです」
2 残りなく。すっかり。
3 (俗な言い方)非常に。とても。「全然愉快だ」
出典:goo辞書
「全然」の正しい使い方
「全然」の正しい使い方は、主に下記の3つに分けられるでしょう。
「全然+否定」(全く・まるで・少しも)
- 「予定到着時刻に全然間に合わない」
- 「この使い方は全然知らなかった」
- 「この言葉には、全然違う二つの意味があります」
「全然+肯定」(すべて・残りなく・すっかり)の意
- 「彼の提案には全然同意である」
- 「私はその選択に関して、全然納得しています」
「全然+肯定」(非常に・とても)の意の俗な言い方
- 「予定よりも全然速く着きそうだ」
- 「この日程で全然大丈夫です」
- 「私は明日でも全然OKです」
「全然大丈夫」はあり?
結論からいうと、「全然大丈夫」というような、「全然+肯定表現」は正しい用法であるといえるでしょう。
国語辞典などで、「全然」は「後に打ち消しや否定表現を伴う」などのように説明されていることがあり、学校教育でもそうした教えが浸透しているようです。
ただし、「全然+肯定表現」は三省堂や岩波などの国語辞典に載っている用法です。そのため、「全然大丈夫」は語法ではないといえるでしょう。
名著から見る「全然」の使用例
ここで、かつての名著から「全然」の使用例を抜粋してみましょう。
「一体生徒が全然悪いです」
夏目漱石『坊ちゃん』明治39年
「全然関知せざるもののごとく装い」
石川啄木『日露戦争論』明治37年
「全然、自分の意志に支配されている」芥川龍之介『羅生門』大正4年
「彼等の菩提を弔っている兵衛の心を酌む事なぞは、二人とも全然忘却していた」
芥川龍之介『或敵打の話』大正9年
「私は全然この農場から手を引くことにします」
有島武郎 『小作人への告別』大正11年
かつての文豪の文章にも、「全然」という言葉が使われています。このように見ると、明治や大正の時代には「すべて・残りなく・すっかり」の意味で頻繁に使用されていたことが分かります。
まとめ
以上、「全然」という言葉の使い方を解説しました。全然にはいくつかの意味があり、「全然+否定」だけでなく「全然+肯定」も正しい用例として使用されています。
今後「全然」という言葉を使う際や、読書をしているとき、ぜひ意味の違いを意識してみましょう。