「確信犯」の使い方【日常で使うことはありえない言葉!?】

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月曜日の朝に遅刻してきた人が、「バスに乗り遅れて遅刻しました」と言ったら、会社の同僚が「日曜に夜更かししただけだろうから、あの言い訳は確信犯だよ」とつぶやいたとしましょう。
この場合の「確信犯」の使い方は、はたして正しいでしょうか?

というのも、「確信犯」という言葉は誤用されやすい言葉なのです。
「確信犯」を正しく使えているか不安になった方は、ぜひこの記事で正しい意味を確認してみてください。

「確信犯」とは、どういう意味?

ではまず、「確信犯」の意味を紹介しましょう。

かくしん‐はん【確信犯】 の解説
1 道徳的、宗教的または政治的信念に基づき、本人が悪いことでないと確信してなされる犯罪。思想犯・政治犯・国事犯など。

2 《1から転じて》悪いことだとわかっていながら行われた犯罪や行為。また、その行為を行った人。「違法コピーを行っている大多数の利用者が―だといえる」

出典:goo辞書

1の意味は、かなり壮大な意味合いの表現。そして、「本人が悪いことでないと確信してなされる犯罪」と表されています。
これを見て、違和感を覚えた人も多いのではないでしょうか。というのも、1の意味で「確信犯」を使っている人は少数。どちらかというと2の意味で「確信犯」を使っている人が多いというデータもあるほどです。

文化庁が発表した「※国語に関する世論調査」で、「政治的などの信念に基づいて正しいと信じてなされる行為、または行為を行う人」と、「悪いことであると分かっていながら行われる行為、または行為を行う人」の、どちらの意味だと思うかを尋ねたところ、次のような結果が出ました。

 平成14年度調査平成27年度調査
政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人16.4パーセント17.0パーセント
悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人57.6パーセント69.4パーセント
出典:goo辞書

本来の意味である1と答えた人は、なんと全体の16〜17%。それに対して、2の意味で答えた人は約60〜70%と圧倒的でした。もともと2の意味は誤用とされていましたが、漢字から意味をイメージしてみると、たしかに2の意味だと思う人が多いのも納得できます。
それに、そもそも1の意味は普段だとまず使わないでしょうし、知らない人が多いというのも無理はありません。

※「国語に関する世論調査」とは、文化庁が1995年(平成7年)から行なっている国の正式な世論調査。漢字や慣用句・敬語・外来語などの理解度や関心度、また会話や手紙などの言語によるコミュニケーションの現状などの日本語に対する人々の意識を調査し、国語施策の参考にしている。

「確信犯」は元々どんな時に使った言葉?

とはいえ、「確信犯」は本来1の「 道徳的、宗教的または政治的信念に基づき、本人が悪いことでないと確信してなされる犯罪。」という意味の言葉。いったいどんなときに使われる言葉として生まれたのでしょうか。


「確信犯」は、元は法律に関する学術用語。政治的・思想的・宗教的といった、信念に基づく犯罪行為やその行為をする人に対して使われたのが始まりです。そのため、一般的に使う言葉とはいえません。


しかし,このような犯罪行為を指し示す場合、次第に別の言葉で表現されるようになっていきました。それは「テロリズム」や「テロ」などという呼び方です。これなら、普段からニュースなどでよく耳にしますし、なんとなく意味が浮かび上がる言葉ですよね。「テロ」と聞けば、「 道徳的、宗教的または政治的信念に基づき、本人が悪いことでないと確信してなされる犯罪。」をイメージする人も多いのではないでしょうか。


「確信犯」という言葉を当てることが少なくなった代わりに、「テロ」が世の中に浸透していったという経緯があります。

新しい意味として広く使われていった「確信犯」

そして、「確信犯」は別の使い方として、本来は誤用であった「悪いことだとわかっていながら行われた犯罪や行為。また、その行為を行った人。」という意味が浸透していったようです。
元々は「信念」といった確固たる意思がある場合に使われていたところから、ちょっとした意思のある犯罪に対しても使われていきました。そのうちに、犯罪だけではなく悪さ程度のことに対しても使われるようになっていったのです。


本来の限定的な意味から、広い意味を持つ言葉として一般的に使われるようになった言葉といえます。そのため、近年の「日本国語大辞典」や「岩波国語辞典」などの国語辞典には「悪いことだとわかっていながら行われた犯罪や行為。また、その行為を行った人。」という意味が新たに追加されているようです。

出典:文化庁月報

「確信犯」の「確信」の意味


「確信犯」の本来の意味に違和感がある人も、「確信」の意味を再確認するとピンとくるかもしれません。

かく‐しん【確信】 の解説
[名](スル)固く信じて疑わないこと。また、固い信念。「勝利を―する」「―をもって言う」

出典:goo辞書

このように「強い思い」を指し示す言葉が含まれているので、「確信」という意味を考えれば、まさに「テロリズム」のような強い信念に基づいた行為を指す言葉だと捉えやすくなるでしょう。

「確信犯」の類語は?


「確信犯」は、言わば「本人のなかでは道理、筋が通っていると確信している行為をする人」のことなので、下記のような意味が類語になります。

思想犯・政治犯・国事犯

どれも一般的な言葉とはいえない重い意味となります。

「確信犯」の例文

では、本来の意味と誤用とされていた意味の2パターンで、どれだけ使い方が異なるか見ていきましょう。

思想犯・政治犯・テロリズムの「確信犯」

  • 「数々の罪を犯した彼は、確信犯ゆえに堂々とした態度だ」
  • 「一つも言い訳もせずに逮捕された容疑者は、自らを悪だと思っていない確信犯だからだろう」
  • 「世のため人のためになると信じて疑わない彼女の行為は確信犯だ」

このように、かなり深く重い表現になります。
では、今では一般的に使われている、本来は誤用であった「確信犯」だとどうなるでしょうか。

悪いことだとわかっていながら行われた犯罪や行為の「確信犯」

  • 「バレないようにやっているつもりの確信犯だと分かっているよ」
  • 「バスに乗り遅れて遅刻したと言ってるけど、あれはきっと確信犯だよ」
  • 「一方通行の道を毎日逆走しているあの車は確信犯に違いない」

このように、比較的軽い印象の言葉になります。また、やはり指し示す意味も大きく変わりますね。

これだけの違いがある言葉のため、誤用とされていた意味が一般的な意味として浸透しているとはいえ、ビジネスの場や、特にフォーマルな場では軽々しく使わない方がいいでしょう。新しい意味で「確信犯」を使う場合は、雑談や親しい間柄の人と話すなど、時と場合に応じて使い分けてみてください。

この記事を書いた人

MIYAMOTO

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